セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第1回 現代空間を照らす江戸切子のスイッチ

TOP > 作品アーカイブ > 第1回 現代空間を照らす江戸切子のスイッチ
「自分が作った作品を、そこで暮らす人が毎日数回は触れてくれる。
作り手にとって、それ はすごく嬉しいこと」――。
江戸切子の匠、鍋谷淳一さんとアーツ&クラフツ商会とのコラボレーションによって生まれた
「江戸切子の照明スイッチ」は、現代の住空間にどのような光をもたらすのだろうか。
江戸切子の歴史をひもときながら、その魅力にせまる。

江戸切子の伝統

マシュー・ペリー
金剛砂:柘榴石(ガーネット)を粉末にしたもの
「色被せ」を用いた江戸切子

江戸の職人が生み出した精緻な技

手仕事にこだわった古今東西の名品を紹介するアーツ&クラフツ商会。
第1回目に紹介する品は「江戸切子」である。
江戸時代に誕生し現代に受け継がれる伝統の技は、
今や広く世界の人びとを魅了する。
その繊細な紋様が織り成す華やかな輝きと、
卓越の技に最初に驚いた外国人は、米国東インド艦隊司令長官として
黒船を率い来航したマシュー・ペリーである。
江戸切子の瓶を手にしたペリーは、文明の遅れた未開の地だと
思っていた日本に、このようなすばらしい技術があることに
驚いたのだという。

江戸切子とは、19世紀初頭の江戸で誕生した切子のこと。
今でこそ、日本が誇る伝統工芸として世界中から注目を集めているが、
そのルーツは異国から伝えられたカットガラスにある。
江戸時代後期、オランダとの貿易により日本にもたらされた
きらきらと輝くこの器を人びとは「ギヤマン」(ダイヤモンドを
意味するポルトガル語「ディアマンテ」が転じたもの)と
呼びもてはやした。

透き通る厚手の肌に、繊細な彫刻が施された
美しいカットガラスに魅了される人びと。
その様子を見た江戸の職人たちはこれを自らの手でつくろうと試みた。
しかし、当時のヨーロッパにあって、ガラスの精製技術は門外不出の技。
カットを施せる厚手のガラス生地の精製は困難を極め、
その生地に繊細なカットを施すのはさらに至難の業だった。

この問題を解決したのが、日本橋のガラス問屋、
加賀屋の徒弟、皆川文次郎という青年である。
主に「ギヤマン」づくりを命ぜられた文次郎は大坂に修業に出かけると、
そこで「江戸切子」の誕生に欠かせない研磨剤
「金剛砂(こんごうしゃ)」――柘榴石を粉末にしたもの――に遭遇。
大坂と奈良に股がる二上山で産出されるこの鉱物は
ダイヤモンドに次ぐ硬さを誇り、この地域では古くより
玉石を磨く研磨剤として用いられてきたものだった。

金剛砂を手にした文次郎は、これを用いて
ガラスに彫刻を施すことを思いつき、さっそく江戸に戻り、
金剛砂を研磨剤に棒ヤスリでガラスのカットに挑戦。
試行錯誤の末、見事美しい紋様を刻むことに成功した。
日本初のカットガラスである「江戸切子」はこうして誕生したのである。

当初、無色透明のガラスで作られていた江戸切子は、
後に薩摩藩が編み出した赤や青などの色をのせる
「色被せ(いろきせ)」という技術を取り入れ、
さらにその魅力を深めていった――。

江戸切子の技術

江戸切子職人 鍋谷淳一
割り出し(わりだし)
粗摺り(あらずり)
魚子文(ななこもん)

正確無比なカットが生むやわらかな光

こうして幾多の職人の知恵と技によって洗練の度を深めた江戸切子は、
時代の意匠を取り込れながら、多彩な輝きを放ち続けている。
鍋谷淳一さんもまた、伝統の技に今に伝える匠。
日本に17人のみという江戸切子伝統工芸士のひとりでもある。

江戸切子独特の精緻で美しいカットはどのようにして生まれるのか。
鍋谷さんに、その工程を見せてもらう。

まず最初の作業は「割り出し(わりだし)」。
割り出し機という道具に生地を乗せ、
模様の見当となる線をひいていく。
どれだけ複雑な模様を施す場合でも、
下絵は縦と横の線だけで構成される。

続く作業は「粗摺り(あらずり)」。
ダイヤモンドの粒子を付着させたホイールに生地を押し当て、
縦と横の線が交わる点から点へと削る。
職人は、自分の頭の中にある完成予想図に則して、
骨格となる線を刻んでいく。
頼りになるのは長年の経験のみである。

「粗摺り」のあとは「石掛け(いしがけ)」。
ダイヤモンドの粒子がより細かいものに変更したホイールで、
さらに細かな紋様を刻む。
一カ所でも線がズレたらすべて台無しになる繊細な作業だ。
そして最後に磨きをかけて完成である。

鍋谷さんが披露してくれたこの紋様は、
魚の卵が連なったようにみえることから、その名が付けられた
「魚子文(ななこもん)」と呼ばれるもの。
精緻なカット技術は、まさに匠の技だ。

綺麗なピラミッド型の紋様は、プリズム効果や屈折によって、
複雑な光の反射を生みます。この美しく多彩な光は、刻み込む線の
方向や深さなど、すべてが正確にそろうことで完成します。
この紋様は簡単そうにみえて意外に難しくて、
これができてはじめて一人前と認めてもらえるのです。
ー 鍋谷淳一 ー

江戸切子×スイッチ

スケッチ
細やかな模様を施していく
完成品

心安らぐ江戸切子の照明スイッチが完成

さて、ここからがアーツ&クラフツ商会のハイライト。
江戸切子の匠、鍋谷さんによる江戸切子の照明スイッチ作りが始まる。

「真っ暗な家に帰宅したときに、
切子が施されたスイッチがあると温かい気持ちになるでしょう。
想像するだけでも楽しいですよね。
私が普段作っているグラスは、日常的に使われるものでは
ないかもしれません。
しかし、照明スイッチに江戸切子をうまく取り入れれば、
自分が作った作品をそこで暮らす人が毎日数回は触れてくれますよね。
作り手にとって、それはすごく嬉しいことなんです」 
使う人が見て、触れて、心安らぐようなスイッチをつくりたい――。
鍋谷さんの想像が膨らむ。

構想約三週間。ようやくイメージが固まった鍋谷さんは、
スイッチの形状から、スケッチをおこす。
「切子のよさを残しつつ、シンプルで飽きのこないものを心がけた」
というデザインは、伝統の紋様をいかしたモダンなもの。
このスケッチをもとに慎重に割り出しを行い、深く刻み込めるよう、
より鋭角のホイールを選択。
花瓶やグラスとちがう平板な生地には、普段とはちがう
絶妙な力加減が要求されるため、慎重にカットを施していく。
「生地に対してより深くまで刻み込んでいるので、
より多彩な屈折や映り込によって、
綺麗な光が浮かび上がるのではないかと思っています」。

完成したのは、伝統工芸の匠の技と現代空間にもマッチする
デザインが融合した江戸切子のスイッチ。
主が帰宅した部屋では、
暗闇で温かみのある光を放つ照明スイッチが待つ。
ひとたび照明をつけると、スイッチ内部のLEDが白色に変わり、
菊つなぎの精緻な紋様と大胆にあしらった星が鮮やかに浮かび上がる。
それはまるで、異次元へとつながる扉のよう。
見て触れて、心安らぐ江戸切子スイッチ。
ここに完成。

アーツ&クラフツ商会 Lot.001 江戸切子スイッチ

ダイジェスト動画

放送第1回:現代空間を照らす
江戸切子のスイッチ

作品アーカイブに戻る