セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第12回 庭を美しく彩る津軽びいどろの手洗い台

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青森は津軽が生んだガラスの芸術、津軽びいどろ。
繊細な色調とやわらかなフォルム、そして大胆な色使いが人びとを魅了する作品は、
1400度の高熱と、ガラスを自在に操る職人の熟練の技から生まれる。
今回のニュー・クラフトは「手洗い台」。
日光を浴びた津軽びいどろが庭を美しく彩る。

津軽びいどろの伝統

津軽びいどろ
津軽びいどろのルーツ、浮き玉
北洋硝子の溶融マイスター 中川洋之さん

津軽びいどろの歴史と受け継がれる伝統の技

日本人の生活にガラスが浸透しはじめたのは16世紀以降のこと。
種子島に漂着したポルトガル人によって、
ヨーロッパ文化とともにガラス製品がもたらされたことによる。
以来、日本各地で独自のガラス製品が発展。
そのひとつが、独自の色合いが特徴の津軽びいどろだ。
ちなみに「びいどろ」は、「ガラス」を意味する
ポルトガル語の「vidro(ヴィードロ)」に由来する。

津軽びいどろの誕生は昭和に入ってから。
そのルーツは浮き玉にある。
浮き玉とは定置網の設置や漁船の係留などに使われていた漁業の道具。
その美しさは、海外でアート作品として評価され、
なかにはコレクターがいるほどだ。

今回訪れたのは青森市にある北洋硝子。
浮き玉づくりの技術を活かし、
津軽びいどろを伝統工芸へと押し上げたガラスメーカーだ。
弘前の桜をモチーフにした花瓶の製作行程を通し、
卓越した技をみせてもらう。

まずはガラスの原料となる珪砂(けいしゃ)、
ソーダ、石灰を機械に入れ混ぜ合わせ、それを溶解炉に入れ、
炉内の温度を1400度にまで高める。
この温度調整も職人の技。
同社の中川洋之さんは青森県に認定された、
ただ一人の溶融マイスターだ。

温度計を少しでも深くまで差してしまうと溶けてしまいますので、
いかにギリギリで1400度を計るか。長年の経験で、
なんとなく雰囲気でわかるものです。
— 中川洋之

津軽びいどろの技術

宙吹き(ちゅうぶき)
一瞬たりとも気が抜けない
100種類以上のガラス粒
紙リンと呼ばれる濡らした新聞紙で形を整えていく
吹き棹を切り離す
耳の細工を施す
12時間冷やして完成

浮き玉づくりの妙技

1400度の高温でどろどろに溶かしたガラス種を、
空気が入らないように注意しながら、
およそ1.5kgの吹き棹に巻き取っていく。
このとき、溶けたガラスが垂れないよう、
常に棹をまわし続けなければならない。

空中でガラスに息を吹き込み、
膨らませるのは「宙吹き(ちゅうぶき)」と呼ばれる技。
作品によっては複数の職人が工程に応じて、この作業を行う。

一度に巻き取れるガラスの量は限られているため、
玉取りをしては宙吹き(ちゅうぶき)を繰り返す。
この作業ができるようになるまで、少なくとも10年はかかるという。

溶けたガラスの扱いはベテランでも一苦労だ。
柔らかいガラスはすぐに形が変わってしまうので、
息を吹き込むタイミングをまちがえるとすべてが水の泡となり、
一瞬たりとも気が抜けない。
浮き玉ほどのサイズになると、
つくられる職人の数も限られてくるという。

浮き玉づくりが佳境に入ると、全体の厚みを均等にするため、
体全体を使って慎重に膨らませていく。
ガラスが冷めたら吹き棹を離す。
そして北洋マークをつけ、完成。

絶妙な色合いの桜の花瓶

桜の花びらを表現するために、
絶妙な色合いの3色の砕いたガラス粒を使う。
唯一無二の美しさを追求するため、
100種類以上もの色ガラスをつくり出す北洋硝子ならでは。

ガラス粒を花瓶につけ、約800度の加工用の炉で溶かす。
そして、濡らしたリンとよばれるお椀型の道具を使い、
丸みをつけていく。
この先の熟練の技が必要とされる工程は、
ベテランの職人の手に委ねられる。 

紙リンと呼ばれる濡らした新聞紙で形を整えていく。
作品が大きくなると吹き棹をまわすことだけで重労働だ。

ここで再び焼いて、熱した台に並べた色ガラスの粒をつけて飾り付け。
ベテランでも宙吹きには細心の注意を払う。
生地や炉の温度管理、職人の技術、
そのどれかひとつが欠けても上質の作品は完成しない。
総重量およそ5kgの棹をまわす腕にも力が入る。

花瓶の形ができると、底となる土台をつけ、
コテと呼ばれる木の板で底を平にする。
そして、イタリア語で「橋」を意味するポンテと呼ばれる棒を底に付け、
花瓶の口をつくるため、吹き棹を切り離す。

完成までの道のりはまだ遠い。
今度は、再びガラスを柔らかくして、
形を整えながらよけいな部分をカットする。
この工程に用いられるのは普通の裁ちバサミ。
その様子は、まるで飴細工のようだ。

次に、飾り用のガラスの巻き付け。
ここで気を抜くとすべてのバランスが崩れ、
これまでの作業が台無しになるので、最後まで気は抜けない。

最後に再び濡らした新聞紙を使い、
巻いたガラスを冷やすと、ガラスは黒色に変化する。
ガラスは冷めてはじめて本来の色がでるもの。

仕上げは飾りとなる耳の細工。
最後に冷えてしまった底をバーナーであぶり、ポンテを切り離す。
ここまでおよそ50分。
作業の手を休めることなく、一気につくり上げる。

この後、急に冷やしたことによってガラスが割れることを防ぐため、
除冷炉で12時間かけてゆっくりと冷ます。
繊細な風合いをもつ桜の花瓶は、
こうした職人の卓越した技と知恵によってつくられるのである。

津軽びいどろ × 手洗い台

北洋硝子の芳賀清二さん
完成品

次世代の津軽びいどろの姿

津軽びいどろの新アイテムづくりに挑むのは北洋硝子の芳賀清二さん。
芳賀さんは、普段は書かないという
デザイン画を床に大きく描きはじめた。

玉取りや宙吹きを繰り返し、ガラス種を大きくする。
そして今回、取り入れたのは青と白のさわやかな色合いのガラス粒。
一体どんなアイテムができるのだろうか――。

完成したのは、庭に置く手洗い台。
青と白のガラスが織りなす、目にも鮮やかな色合いが涼を感じさせ、
日光を浴びて輝く津軽びいどろは庭を美しく彩る。

朝起きて、スッキリした気分になるような色合いを目指しました。
イメージ通りですね。
ー 芳賀清二

これぞまさに、津軽びいどろのニュー・クラフトである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.012 津軽びいどろの手洗い台

ダイジェスト動画

放送第12回:津軽びいどろの手洗い台

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