セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第13回 食卓を彩る黄八丈のテーブルコーディネート

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八丈島でつくられる「黄八丈」は、
自生の草木だけで染めらた森で生まれる絹織物だ。
天然素材から生み出されるその美しさは色あせることを知らない。
今回は鮮やかな黄色が特徴的な黄八丈で「テーブルコーディネート」にチャレンジ。
黄八丈の織りの輝きが食卓を贅沢に彩る。

黄八丈の伝統

蚕の繭
黄八丈
黄、黒、樺の三色が用いられる

時を超えて愛される黄八丈

東京から約290km離れた伊豆諸島のひとつ、八丈島。
自然豊かなその島では、古くから養蚕が行われ、
そこで採れた繭から「八丈絹」という絹織物がつくられていた。
一般的な反物は四丈(約12m)だが、
八丈絹はその倍の、約24mもある。
献納品として高い評価を得ていた八丈絹の発祥の地として、
島全体を「八丈」と呼ぶようになった。

そして江戸時代に入ると絹織物で年貢を納めるようになる。
しかし、当時納められていた八丈絹には、まだ色がついていなかった。
その後、三代将軍家光の命によって八丈絹に色付けされるようになり、
江戸の中ごろからは黄、黒、樺の三色で染められるようになった。
格子や縞柄が織られはじめたのは、そのさらに後のことである。

ところで黄八丈とは、黄色だけではなく、
黄、黒、樺の三色を総称した呼び名である。
なぜ「黄八丈」と呼ばれるのか。
八丈町教育委員会の林薫さんは言う。

黄色はやはりとても目立つ色で、
この色はほかの地域ではおそらく出すことができない色なんです。
ですから、黄八丈は八丈島の織物の
代名詞となったのではないかと思われます。
ー 林薫

やがて黄八丈は人形浄瑠璃や歌舞伎でも扱われ、
庶民の間でも人気を博す。
その輝きは時代を超えて女性たちを魅了。
現在では年に一度、黄八丈の反物でつくられた着物を着た女性たちが
銀座の街を練り歩く「黄八で銀座」というイベントが開催されている。

黄八丈の技術

黄八丈めゆ工房の四代目 山下芙美子さん
フシツケ
輝く黄色の織糸
樺色
黒色は糸を泥のなかへ
三色がさまざまな色に見える

自然のなかで少しずつ染め上がる糸

黄八丈は明治時代より代々女性が技を受け継いでいる。
黄八丈めゆ工房の四代目の山下芙美子さんもその一人。
夫の誉さんは草木染めで工房を支え、
子どもたちが染め技を受け継ぎ、家族で伝統の技を守っている。

黄八丈の3つの色は、すべて八丈島に自生する植物で染められる。
代表的な黄色の材料は、島では「カリヤス」と呼ばれるコブナグサだ。
秋に収穫して乾燥し、一年分を保存しておく。

糸を染めるには、工房でコブナグサを大釜に入れ、3時間ほど煎じる。
コブナグサは釜に入れるとすぐに黄色い色素を出す。
これが「フシ」と呼ばれる染料だ。
3時間後、できあがったフシを糸にかけて色を染み込ませる。
この染色法は「フシツケ」と呼ばれる八丈島の伝統の技法だ。

フシツケした糸は一晩つけ込み、翌朝、天日干しをする。
この工程を20回ほど繰り返すと糸は渋い茶色へと変化。
そこで登場するのが、
島に自生するサカキとツバキを燃やしてつくった灰。
これが糸を黄金の黄色に変えるのだ。

使用されるのは灰を水で溶き、1週間ほど経って浮かんでくる灰汁。
そこに糸を浸けると、灰汁に含まれる金属イオンが
植物の色素と反応して、鮮やかな黄金色へと変える。
こうして輝く黄色の織糸は完成する。

黒色と樺色はどうだろう。
まず、黒色に用いるのはスダジイの皮を剝ぎ、
2〜3年かけて乾燥させたもの。
それを6時間ほど煎じてフシツケをする。
その作業を15回ほど繰り返したところで糸を泥のなかへ投入。
この島の泥は鉄分が多く、やはり化学変化によって糸は黒く変色する。
しばらく時間をおいたあと、小川で糸の泥を洗い流す。
すべて自然の素材だからこそできる作業だ。
しかし何よりも大切なのは、この作業を2度繰り返すこと。
これにより漆黒の輝きに、さらに磨きがかかる。

樺色はタブノキを使う。木はフシツケの直前に伐採し、皮を剝ぐ。
タブノキの皮は空気に触れると酸化してすぐに
赤く変色してしまうため、剝いだタブノキの皮はすぐにお湯に入れ、
3時間ほど煎じる。
樺は色ムラができやすいので、最初のフシツケは糸をよく動かし、
全体に色を馴染ませる。
そして、酸化による発色を促すために、
一晩空気にさらしておく。
樺の色は15回ほどフシツケを繰り返し、
仕上げに竃の灰でつくった灰汁をかけ完成。
こうして3つの織糸はできあがる。

光の反射で変化する織りの技

次はいよいよ糸を反物にする織りの作業だ。
芙美子さんが織る黄八丈は、
色の組み合わせと織り方のちがいによってさまざまな表情をみせる。
「平織り」は伝統的な黄八丈の柄で、格子や縞柄をしている。
織り模様が立体的に見え、
平織りとはちがった表情をみせる「綾織り」もある。
芙美子さんが綾織りを応用してつくった着物は、
遠目だとさまざまな色の糸で織ったように見えるが、
実際に使用されているのは黄色、黒、樺の三色だけだ。

機織りが終わると、糸にかけていたノリを落として天日干しをする。
織り模様は太陽の光を受けると、またさまざまな色に変化する。
こうして八丈島が誇る黄八丈は完成するのだ。

黄八丈 × テーブルコーディネート

完成品
箸留めも

黄八丈が彩るテーブルコーディネート

黄八丈めゆ工房の山下芙美子さんに依頼したのは、
これまでにない黄八丈の作品。
芙美子さんは新しい作品をつくるとき、
糸を組み合わせながら柄を考えるのだそう。
巧みな色の配合で、いったいどんなアイテムができあがるのだろう。

完成したのは食卓を贅沢に彩る黄八丈のテーブルコーディネート。
八丈島の大自然から生まれた新アイテムだ。
黄色と樺で織った渋めのテーブルランナーと、
彩り鮮やかなランチョンマットはテーブル上で黄八丈独自の光を放ち、
繊細な糸でつくられたおしゃれな箸留めは、
食卓をより華やかに演出する。

“ああ、キレイだなぁ”と思う島の景色やさまざまな風景を見ると、
なんとかそれを黄八丈で表現したくなるんです。
やっぱりキレイなものを見たりするのが大好きなんですね。
ー 山下芙美子

八丈島の自然と人が織りなす手仕事の逸品は、
森の輝きを暮らしのなかに溶け込ませた。
これぞ、黄八丈のニュー・クラフトである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.013 黄八丈のテーブルコーディネート

ダイジェスト動画

放送第13回:黄八丈のテーブルコーディネート

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