セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第16回 日常に伝統美を取り入れる京鹿の子絞のパソコンケース

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古の都・京都には、女性たちのあこがれる、きらびやかな伝統工芸がある。
「京鹿の子絞」――それは豪華絢爛な装いを競う江戸時代の
大奥でもてはやされ、多くの女性たちを虜にしてきた着物だ。
今では希少となった京都を代表する伝統の美が、パソコンケースに生まれ変わる。

京鹿の子絞の伝統

京鹿の子絞の髪飾り
鹿の子結い

時代を経ても色あせない京の美

「絞り染め」とは、布の一部を糸で括(くく)って束ね、
染色するときに、その部分だけが染まらないようにする技法である。
染まらなかった部分が、美しい文様として浮かび上がるのだ。

日本ではじめて「染め」という表現がみられるのは『日本書紀』。
外国の使臣に染めものを贈呈していたことが記されている。

室町時代になると、明との貿易によって、
さまざまな染色技法が伝来し、
染めのバリエーションが増えていった。

江戸時代には、鹿の子絞の職人は「鹿の子結い」として専業化。
女性の仕事として受け継がれていく。
明治時代には、帯揚げや髪飾りの柄などにも使われ広く普及。
現在も、京都の舞妓さんの髪飾りには京鹿の子絞りがあしらわれている。

ちなみに、「鹿の子」という言葉は、
絞りの文様が子鹿のはん点に似ていることに由来する。
昔から鹿が神の使いと信じられてきた日本では、
鹿の子絞は縁起物として重宝されてきたのだ。

京鹿の子絞の技術

文様のベースとなる下絵を描く
丸い穴を開けていく
括り(くくり)
「本疋田」(ほんびった)
桶絞り
桶を水につけて生地をなじませる
半日かけて乾かす
くっきりと鮮明に染め分けされた生地

京鹿の子絞

京鹿の子絞の製作は、いくつかの工程にわかれているため、
古くから分業制がとられてきた。
つまり、作業ごとに専門の職人がいるのである。

今回は、紫陽花があしらわれたストールを例に製作工程を紹介する。

最初の工程は「下絵」。
文様のベースとなる下絵を描くのは絵師の仕事。
模造紙に紫陽花の完成予想図を描き、
構図が決まったら厚紙に下絵を写す。
ここで、ポンチと呼ばれるキリのような道具で
厚紙に丸い穴を開けていく。
この穴から摺りを行い、布を糸で括るときの目印にする。

次は、絹の生地に下絵を写す「摺り(すり)」の作業。
摺りに使われるのは露草の汁。
青花は水で簡単に洗い落とせるため、下絵には最適だ。

下絵が完成したら、いよいよ京鹿の子絞の花形、
絹糸で生地を括る「括り(くくり)」の作業へ。
仕上がりを大きく左右する工程だ。

この作業を行うのは、川本和代さん。
この道60年の大ベテランだ。
使用するのは、22本の絹糸をこよった「しけ糸」と呼ばれるもの。
道具は一切使わず、絵師が摺った青花の目印を頼りに、
指のみで生地を括る。

続いて下から上に向かって、時計回りに4回ほど糸を巻く。
川本さんによれば、
このとき糸が重ならないようにするのがポイントだという。
そして、最後に2回硬く締めて完成。
こうしてできあがるのが「本疋田」(ほんびった)と呼ばれる括りだ。

この作業を行うのは、川本和代さん。

たとえば、着物一面に絞りが入る総絞りになると、一反約15万粒。
振り袖やったら約17万粒。
ですから、できあがるまでに1年はかかります。
自分の体調が悪いときは括れへんしね。
二粒まとめて括る、なんてことはもちろんできませんので、
急かされても、すぐにはつくれません
— 川本和代

職人技の結集が生む鮮やかな紫陽花

括りの次は、「染分け」の作業へ。
染分けとは「染色」の前に行う下準備のこと。
今回用いられたのは、桶絞りと呼ばれる技法だ。

まず色を染分ける境目に糸を通す。
染める部分だけを桶の外に出し、その他の生地は桶のなかへ。
生地を桶に固定するため、針で止めたら蓋をする。
桶の二本の木の両端に縄をかけたら、
生地を固定していた針をすべて抜き、
専用の道具を使ってさらにきつく締める。
最後に、桶のなかに染料が入らないように密封したら完成。
これを染め屋にもっていく。

染めの工程は、桶を水につけて生地をなじませることからはじまる。
こうすることで、括った糸が膨張し、奇麗な柄が染め上がるのだ。
染織家の滝本正さんは、染めの工程を次のように語る。

しっかりと染めるためには、当然時間をかけなあかんけど、
そうすると今度は、桶のなかの染めてはいけない生地にも
色がついてしまうリスクがあるわけや。
だから、どのタイミングで染色を終えるか。
言ってみれば、技が問われるわけやね。
染めの工程にくるまで、何人もの職人が
かかわっているわけやから、
ここで色つけるのに失敗したら、大変なこと。
緊張感をもって作業やらなあかん。
— 滝本正

染まり具合を確認するため、
生地を乾かし、見本と照らし合わせる。
思い通りの色がついたら、水につけ色を定着させ、
半日かけて乾燥させる。
桶を割るのは、染め分け職人の仕事だ。
蓋をとると、釘を打った部分を境に、
くっきりと鮮明に染め分けされた生地が出てくる。

最後の工程は、完全に生地を乾燥させる「湯のし」。
ここで、いよいよ川本さんが括った糸が解かれていく。
括った部分がみごとに染め分けされ、
白い紫陽花の柄がきれいに浮かび上がった。
最後に、湯の熱で延ばして乾燥させるのだが、
絞りによってできたでこぼこをどの程度延ばすかは、
湯のし屋の判断にゆだねられる。

こうして、5人の職人の技が集結され、
一枚のストールが完成する。
美しく染分けられた赤と白。
初夏を彩る本疋田の紫陽花が、ひときわ大きな輝きを放つ。

京鹿の子絞 × パソコンケース

一粒ずつ括っていく
完成品
書類などを入れるバッグとしても

日常の暮らしを彩るニュークラフツ

京鹿の子絞のニュークラフツに挑戦するのは、
括り職人の川本和代さん。

今回は、粒(絵師が書いた括りの目印)がないのを、
あるようにして括る本座鹿の子という技法を
使ってみたいと思います。
— 川本和代

本座鹿の子は、
職人が自分の感性で粒の間隔や括る場所を調整するため、
括り職人の技と味が発揮される技法なのだ。

川本さんは大まかな輪郭を生地に描き、そこに一粒ずつ括っていく。

今回は括りの技を生かすため、染分けは行わず、
直接染色する「一色染め」を採用。
理想の藍色になるまで、染めの作業を何度も繰り返した。

完成したのは、京鹿の子絞の風合い豊かなパソコンケース。
紺色に染められた柔らかい絹の生地に、
本座鹿の子のワンポイントが浮かび上がるオシャレなアイテムだ。
裏にはボタンがついており、パソコンを入れた後、
蓋を閉じることもできて、書類などを入れるバッグとしても使える。

伝統の美を身近に感じさせてくれる、
これぞまさに京鹿の子絞のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.016 京鹿の子絞のパソコンケース

ダイジェスト動画

放送第16回:京鹿の子絞のパソコンケース

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