セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第19回 夏の客間に涼風と洗練をもたらす房州うちわの一輪挿しアート

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“日本三大うちわ”のひとつに数えられる、千葉県館山市の伝統工芸「房州うちわ」。
その魅力は、江戸の昔より伝えられる伝統の技がみせる、骨組みの美しさにある。
夏の風物詩に欠かせないうちわのニュークラフトは、
こだわりの職人も納得の「房州うちわの一輪挿しアート」である。

房州うちわの伝統

房州うちわ
江戸団扇(えどうちわ)
商店名が書かれたうちわ

うちわは庶民のものではなかった?!

歴史に登場する最も古いうちわは、高松塚古墳の壁画に描かれた
侍従の女性が持つ翳(さしは)と呼ばれるもの。
しかしその目的は、扇ぐことではなく高貴な人の顔を隠すことだった。

10世紀頃になると翳に新たな使い方が登場する。
それは虫をはらうこと。
翳は「は」とも呼ばれ、小型の翳(は)で
蚊などの虫をはらっていたのである。
その虫をはらう行為、「打つ翳(うつは)」が転じて
「うちわ」となったといわれている。

それから時代が過ぎ、戦国の世になると
まったく異なる使い方のうちわが登場する。
戦で大将が指揮を執るための「軍配団扇(ぐんばいうちわ)」だ。
方位や天文などが描かれたうちわで、
戦法を占ったという軍配団扇は、後に相撲で行司が用いる軍配となった。

うちわが庶民の間に広まるのは江戸時代のこと。
扇ぐうちわとして、女性たちの人気アイテムに。
とくに浮世絵が描かれた江戸団扇(えどうちわ)が大流行したという。
明治時代になると商店名が書かれるなど、
宣伝や贈答用として、より身近になったうちわ。
その人気を支えてきたのが、日本三大うちわである。

三大うちわとは、金毘羅参りのお土産用としてはじまった
香川の「丸亀うちわ」と、もっとも古い歴史をもつ京都の「京うちわ」、
そして今回紹介する、江戸団扇の流れを汲む「房州うちわ」のこと。
丸い竹をそのまま割いてつくる骨組みが「房州うちわ」の
伝統スタイルとして、いまに受け継がれている。

房州うちわの技術

うやま工房の宇山正男さん
竹を割る
弓を張る
目拾い(めひろい)
骨組みに糊をつけ表地にはり付けていく
完成品

竹を育てることからはじまるうちわづくり

千葉県房州半島の南に位置する館山市。房州うちわのふるさとだ。
南房州は古来、竹の産地として知られ、
江戸時代にはうちわの材料となる竹の供給地でもあった。
明治から大正時代になると、江戸団扇の職人や問屋が江戸より
この漁師町に移り住み、うちわづくりがはじまったとされる。

しかし現在、南房州で、うちわづくりをしているのは4つの工房のみ。
今回は、そのうちのひとつ、うやま工房を訪ね、
その技を見せていただいた。

うやま工房の宇山正男さんは、
房州うちわのすべての工程をひとりでこなせる唯一の職人だ。
そのうちわづくりは、材料となる竹を育てるところからはじまる。

房州うちわの材料は女竹(めだけ)という細い竹。
育てた女竹は、虫がつかない冬にまとめて伐採。
素材となる竹の長さをそろえ、
皮をはぎ、磨きをかけるなど、準備作業に約3カ月。

まずは水につけて柔らかくしてから、竹を割る。
最初は4等分に。続いてそれを8等分に。

次に竹を外側に引いて腰を折る。
力の入れ具合で折る位置が異なるため熟練の技が必要だ。
さらにそれを16等分まで割いたところで
竹の内側の柔らかい部分を削る。
こうして薄くすることで、繊維の細かい部分だけが残され、
しなりが生まれるのだ。

最終的に60本以上になるまで細かく割く。
竹を操りながら真っ直ぐに割く際に頼りになるのは
経験に培かわれた職人の感覚のみ。
一本の女竹から、まるで茶道の茶筅のような骨組みができあがる。

自然の素材を自在に操る職人の技

続いては、房州うちわの顔とも言える丸い柄の上にある「窓」づくり。
側面からみるとふっくらと膨らんでいる窓の
立体的な曲線美こそ房州うちわの魅力だ。

次の工程で重要なのが「弓」というパーツ。
節のところに差し込んだ弓に糸の端を仮止めし、高さを調節。
そして、弓を曲げ、糸をしっかり固定し、骨組みに張りをもたせる。

弓が弱かったりするとどうしても(全体が)狂ってくるね。
弓がぴんと張るようにしないと」
− 宇山正男

骨組みをさらに奇麗に平たくするために必要なのが、
「目拾い(めひろい)」という作業。
一本おきに竹を取り、そこへ竹ヒゴを挟んでいく。
交差して広がった竹を元の方向へもどし、それを竹ヒゴで固定するのだ。
これを炭火で炙ると熱によって竹が柔らかくなり、形が変化。
挟んだ竹を抜くと、きれいに平らな骨組みが完成。
竹の性質を利用した伝統の技である。

ここからはようやく貼りの作業。
骨組みに糊をつけ表地にはり付けていく。
編み目の山を生地の形に合わせるため、
ヘラで調節しながら、骨組みが均等になるように整えていく。

裏紙を貼る刷毛で糊を定着させたら、一日乾燥。
その後、余分な竹と生地を切り落とし、
最後に縁取り用の和紙に糊を塗り、
へりを付ければ房州うちわの完成だ。

竹を操り、60年以上にわたりうちわをつくり続けてきた宇山さん。
それでも、「自分はまだまだ一年生」だと言う。
自然の材料を扱うのはそれほどまでに難しいことなのだ。
一つひとつ丁寧に、自然の素材でつくる房州うちわは、
江戸の伝統を今に伝える手仕事の逸品である。

房州うちわ × 一輪挿しアート

さまざまな素材で作られたうちわ
完成品
美しい透かし模様落水紙を用いた

透かし模様の落水紙を活かした涼しげな逸品

すべての工程を一人でこなす唯一の房州うちわ職人、宇山さん。
うちわに貼る生地にもこだわりがある。
そのひとつが浴衣の生地。
伝統工芸士仲間から手に入れた端切れなど、
さまざまな素材に挑戦している。
その試みは、今回のニュークラフツづくりにも活かされている。

今回の作品づくりに協力いただいたのは、
岐阜県美濃市で手漉き和紙を作る大光工房。
ここで、房州うちわのニュークラフトのために
特別な和紙をつくってもらったのだ。
それが、透かし模様の落水紙である。

美濃から届いた和紙で、さっそく作品づくりにとりかかる宇山さん。
「最初からいいなと思いましたよ。これは、いいデザインです」と、
こだわりの職人、宇山さんも満足のいく仕上がりに。

完成したのは、女竹でできた一輪挿しに
桔梗の押し花をあしらった房州うちわの一輪挿しアート。

紙はこだわりの美濃和紙。
落水紙から透けて見える夏の花と骨組みとの調和が涼しさを誘う。
暑い夏に粋なアートで心を和ませる。
これぞ、房州うちわのニュークラフトである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.019 房州うちわの一輪挿しアート

ダイジェスト動画

放送第19回:房州うちわの一輪挿しアート

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