セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第2回 暮らしを柔らかく包み込む美濃和紙スリッパ

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軽くて肌触りのいい和紙。なかでも「美濃和紙」は、江戸の昔より最高級品として知られている。
今回のチャレンジは、この上質の和紙でスリッパをつくること。
和紙とスリッパ、両職人のプライドと卓越の技によって生まれた新商品「美濃和紙スリッパ」は、
現代の住空間に柔らかな彩りと温かみをもたらす。

美濃和紙の伝統

川で育まれた和紙の技術
日干しの風景

日本最古の紙?! 美濃和紙の魅力

手仕事にこだわった古今東西の名品をそろえるアーツ&クラフツ商会。
第2回目は「和紙」。
なかでも江戸の昔より最上級の紙として重宝されてきた
「美濃和紙」にスポットをあてる。

訪れたのは古来和紙の一大産地である岐阜県美濃市。
世界に誇る美濃和紙は、山々の間を縫うように流れる清らかな
川の水によって育まれてきた。
受け継がれる高度な紙漉きの技術は、
近くユネスコの無形文化遺産に登録される見込みだ。

その歴史は古く、現存する日本で漉かれた最古の紙(正倉院に伝わる
702年の戸籍用紙)の一部にも使用されている。
最大の特徴は長い年月にも耐え得る丈夫さと、
漉きむらのない美しさにある。
江戸時代にはその品質の高さから、最上の障子紙
および記録用紙とされ、幕府の御用紙に指定されていた。

破れにくい強さと、光を透す薄さ――障子紙の
最高峰ともいうべきクオリティを誇る美濃和紙。
現代ではこの特徴をいかして、照明器具の素材として活用されることも。
近年、美濃では美濃和紙を使った「あかりアート」作品のコンテストが
開催されるなど、その新たな可能性に注目が集まる。

美濃和紙の技術

楮(こうぞ)を水にさらす
塵取り
紙漉き
紙漉きの極意を語る鈴木さん
日干し

漉きむらのない無垢な紙ができるまで

美濃和紙の特徴はとにかく丈夫で薄いこと。
そして、漉きむらがなく、塵ひとつ見当たらない美しい白さにある。
そんな最上級の和紙はどのようにして作られるのだろうか。

和紙づくりは、実は漉くまでの下準備に大変な手間がかかるのだ。
まずは外皮を剥いだ楮(こうぞ)の皮を丸一日水にさらす。
こうすることで繊維はやわらかくなり、色も白くなる。
翌日には、この皮を大きな釜で煮込む。
その際、アルカリ性のソーダ灰をまぜることで、
繊維をつなぐ成分を溶かし、ほぐしていく。

次の作業は「塵取り」。
かつては河原で行われていたという、
下準備のなかでも最もつらい作業だ。
色の付いた部分や硬い繊維をひとつずつ、
身を屈めた姿勢のまま手で取り除いていく。
水は川から引いた清らかな水。
水温は一年を通して変わらない15〜18度程度である。

美濃和紙作り20年の古田まり子さんは
「体を三つに折るこの姿勢が大変」だと言う。
しかし、想像以上につらいこの作業こそ、美しい紙の秘密。
なぜなら漂白をしない和紙作りにあって、
塵を見逃せばそれがそのまま紙の汚点となってしまうからだ。

若いころは、この仕事が一番嫌でした。
でも、塵ひとつないきれいな紙を作ろうと思ったら、
この作業はおろそかにできない最初の大事な仕事なんです。
ー 古田まり子 ー

これらの作業を経て、ようやく「紙漉き」へ。
鈴木豊美さんはこの道25年の紙漉き職人。
塵を取り除いた原料を簀桁(すげた)で掬い上げ、
繊維を絡ませ紙にしていく。
簀桁の重さは約10kg。
かなりの力仕事のはずだが、
テンポ良く軽快に簀桁を揺らし続ける鈴木さん。
こうして1日約8時間、160枚分の作業を繰り返す。

求めるのはどこまでも無垢な紙

美濃和紙は漉き方にも特徴がある。
「十文字漉き」という、前後だけでなく
左右にも揺らす独特の漉き方がそれだ。
手間はかかるが、繊維を四方にしっかりとからませることができるため、
それだけ薄くて強い和紙ができるのだ。

そんな鈴木さんによれば、紙漉きの極意は「リズムと音」だという。
簀桁の上をすべる水の「きれいな音」は、
水が無駄なくスムーズに動いている証拠なのだそうだ。

最も難しいのは全体的にムラを作らず、どの紙も同じ厚さにすること。
そのさじ加減は、体に染み付いた感覚だけが頼りである。
しかし、熟練の鈴木さんをもってしても、「完璧な紙は、
何百枚に1、2枚」だと言うから、その難しさは推して知るべしだろう。

そしていよいよ簀の上からはがした紙を板に貼付けて日干しに。
板には、木目の細かい栃ノ木が使われる。
大きな一枚板は、どれも百年以上も前のもの。
昨今ますます入手困難になりつつある貴重なものだ。
軒先に和紙を乗せた板が並ぶ風景は、何百年も続く和紙の里ならでは。

日干しのあと、生乾きの状態で一枚ずつはがし、
刷毛で板にならしていく。
この刷毛さばきが強すぎると板に貼りつき、
弱過ぎても途中ではがれてしまう。
和紙は紫外線にあてることで、より白くなる。
こうして最高品質の和紙は、一枚一枚丹念に作られるのだ。

美濃和紙 × スリッパ

和紙職人 加納武さん
試行錯誤を重ねるスリッパ職人 大川一夫さん
完成品

職人たちの技と矜持が生んだ「美濃和紙スリッパ」

卓越した技を今に伝える美濃和紙のプロダクトとして、
番組では日々の暮らしで使える意外なおもてなしアイテムを考案。
寒いときは暖かく、暑いときに涼しげな和紙の特徴をいかした、
その新商品こそ「美濃和紙スリッパ」である。
和紙×スリッパの組み合わせは、
住空間にどのような驚きをもたらしてくれるのだろうか。

和紙は軽くて丈夫、そして肌触りも抜群だとはいえ、
障子紙のような薄いものでは日々使用されるスリッパには適さない。
訪ねたのは和紙職人、加納武さんの工房だ。
美濃和紙の伝統をふまえつつ、さまざまな紙を創作している。
そのなかから、スリッパの素材用に厚手のものを手にした加納さん。
「水に濡れても破れない強さがあり、肌触りも柔らかい」のが
その理由だ。

加納さんは選んだ紙を手でもみ、
素材の柔らかさと肌触りの良さをさらに引き出していく。
続いて、耐水性を高めるために表面にこんにゃくのりを塗る。
この塗りと乾燥を、3度繰り返す。
スリッパのカラーバリエーションを考慮し、柿渋で染めた紙も用意。
こうして柔らかな肌触りでありながら、
ひと際丈夫な和紙――スリッパとなる生地が完成した。

このスリッパ用の和紙を携え向かったのは、
東京の下町、葛飾区にあるスリッパ一筋の工房だ。
手渡された和紙の感触を確かめ顔をしかめる職人の大川一夫さん。
肌触りが優れている一方で、伸び縮みが少ないという欠点をもつ和紙を
素材としたスリッパ作りは、ベテランの職人にとっても
未知の世界である。
しかし、そこで大川さんの職人魂に火がついた。

スリッパは裏返しの状態で生地を縫い合わせ、
最後にひっくり返して完成となる。
だが、伸び縮みが少ない和紙はなかなか裏返らない。
試行錯誤が続く。しかし、そんな壁をみごとに乗り越え、ようやく完成。

エントランスに置かれた「美濃和紙スリッパ」は、
その絶妙な味わいが空間に温かみを添える。
和紙の柔らかさと、柿渋で染められた色は和風でありながら、
洋風のフローリングにもマッチする。
履き心地の良さを堪能するなら、やはり素足。
羽のように軽く、優しい肌触りで足を包み込み、
これぞ美濃和紙のニュークラフツ。
「美濃和紙スリッパ」は、日々の暮らしに独特の風雅な時間を演出する。

アーツ&クラフツ商会 Lot.002 美濃和紙スリッパ

ダイジェスト動画

放送第2回:暮らしを柔らかく
包み込む美濃和紙スリッパ

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