セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第20回 上質の音と空間をもたらす寄木細工のスピーカー

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自然木の色だけで、驚くほどカラフルな文様を生み出す「箱根寄木細工」。
木を削り、幾重にも寄せ合わる伝統の技と、新たな作品に挑む職人が手がけたニュークラフツは寄木細工のスピーカー。
その温もりを感じさせる音が、ささやかな日常を、より上質なものにしてくれる。

寄木細工の伝統

「箱根寄木の間」の細工
寄木細工
伝統工芸品として、人びとに愛され続けている

木材豊富な箱根で発展した寄木細工

日本屈指の景勝地、箱根。
星野リゾトートが展開する高級旅館「星野リゾート 界 箱根」では、
地元の伝統工芸士などとのコラボレーションにより
「ご当地部屋」とよばれる「特別室」を設けている。
その名も「箱根寄木の間」。
客室のいたるところに配された寄木細工の品々は、普段知ることのない
伝統の技を身近に感じられるとあって、ゲストにも好評だ。

そもそも木を寄せ合わせて幾何学模様を生み出す寄木細工は、
日本だけでなく、古くから世界各地にある技。
約3400年前には、古代エジプト第18王朝ツタンカーメン王の墓に、
寄木細工でつくられたサンダルが埋葬されていたという。

ではなぜ、箱根で寄木細工が発展したのだろうか。
木の種類が豊富な箱根は、古くより木材を削ってお椀やお盆をつくる、
木地挽き(きじびき)が盛んだった土地である。
小田原に入城した戦国大名、北条早雲が、
木工業の優れた技術に目を付け、租税などを免除し職人を手厚く保護。
これによって職人の技術が向上した。
江戸時代、参勤交代政策により街道や宿場の整備が行われると、
箱根には各地から温泉目当ての旅行客が増加し、
それにともない木地挽き製品は盛んに売られるようになった。

江戸時代後期には、「寄木」の技法が確立。
幕末になると、寄せた木をのこぎりで挽き割りし、
箱や家具などにはる装飾技法が発展。
横浜の開港時には、漆器や陶器に混じり、
寄木細工も海外へと輸出されたという。

明治30年ごろになると、カンナで薄く削る技術が生まれ、その装飾を
施した「秘密箱」は、箱根寄木細工を代表する人気商品となった。

現在、箱根寄木細工がつくられているのは、小田原・箱根地方のみ。
身近な伝統工芸品として、また箱根を象徴するお土産として、
人びとに愛され続けている。

寄木細工の技術

種木をそのまま加工するのが「ムク」
寄木細工の文様は100種類以上ある
丸鋸でおよそ8ミリの厚さにスライスする
板を貼りあわせていく
丸く削ると、その側面から新たな文様が生まれる。
完成品

逸品を生む丹念な作業の積み重ね

箱根伝統の寄木細工の技を知るべく訪れたのは、
神奈川県小田原市の露木木工所。
3代目の露木清勝(きよかつ)さんは、
現在5人しかいない箱根寄木細工の伝統工芸士である。

色の異なる木を寄せ合わせてつくられる寄木細工づくりには、
2つの製法がある。
ひとつは、寄せた木をさらに組み合わせてできる「種木(たねぎ)」を
カンナで数ミリの厚さに削り、板の表面に貼り合わせる「ズク」、
もうひとつは、種木をそのまま加工するのが「ムク」である。

今回見せていただくのは、「ムク」の工程だ。
まずは、最も重要な木材選びから。
使用する木材は、工房で2年以上乾燥させたもの。
伐採直後、木は水分を多く含み加工ができないからだ。

寄木細工の文様は100種類以上あり、魔除けの鱗文様や、
長寿を意味する亀甲文様など、吉祥を意味するものが多い。
露木さんがつくろうとしているのは鱗文様だ。
製作には、こけしにも使われるミズキと、
地中に2000年以上埋もれていた桂神代の2種類が使われる。
木材をカットして、1尺1寸の長さにそろえたら、
木の表面をカンナで削って平らに。
板を自作の専用道具でおさえながら、
丸鋸でおよそ8ミリの厚さにスライスする。
刃との相性が悪いと木が飛んでくることもあるという、危険な作業だ。

板をすべて同じサイズに加工し終えたら、これらを貼り合わせる。
板がずれないよう輪ゴムで固定し、まる1日、自然乾燥させる。
乾燥したら、表面を削り、7ミリの厚さにそろえる。

さらにこの板を直角二等辺三角形にカット。
切った木材は型に入れ、さらに手カンナでかたちを整えていく。
その手つきは慎重だ。

各工程の精度が、最終的な品物の良し悪しを左右します。
だからこそ、すべての工程で、気の抜けない作業が続きます。
ー 露木清勝

自然の風景から生まれる新たなアイディア

続く工程は、箱根寄木細工の特徴である文様づくりへ。
16本の木材を木工用の接着剤で貼り合わせる。
これらの木材を寄せ合わせ、少しずつ大きくしていく。
組み合わせた三角形の寄木を鱗文様専用の型に置き、
機械で圧力を加え1日乾燥させる。
こうしてできた寄木を貼り合わせ、さらに大きな三角形をつくり、
再び圧力を加えながら今度は1週間、しっかりと乾燥させる。

すでにここまでで約10日。根気のいる作業が続く。
三角形を組み合わせてできた4つの正方形を組み合わせて、一枚の板に。
この板は、実に512本の木材が寄せられたもの。
これを6.5ミリの深さに丸く削ると、その側面から新たな文様が生まれ、
立体的な美しさが浮かび上がる。

製作日数およそ2週間。
20以上もの工程を経て伝統的な鱗文様の器がようやく完成した。

ガラスの器をのせて、
その器越しに寄木を見ると、模様が歪んで見えます。
その面白さが狙いです。
ー 露木清勝

常に新しい作品に挑戦し続ける露木さんの、
発想の源はどこにあるのだろうか。

工房周辺は、富士山を一望できる、自然に恵まれた場所です。
とくに冬から春にかけての木々が芽吹きはじめる季節は、
刺激の宝庫。
外を歩くだけで、いろんな発想が生まれます。
それをもとに、手にした方が“これ、寄木なの?”と驚くような
新しい伝統工芸の作品を生み出したいですね。
ー 露木清勝

寄木細工 × スピーカー

作業を進める露木清高さん
完成品
スマートフォンをスピーカーに

リビングに映える寄木のスピーカー

そんな父、清勝さんの想いを受け継ぐ新進気鋭の作家、
露木清高さんに、箱根寄木細工のニュークラフツづくりを依頼した。

清高さんが作品づくりに選んだのは、全8色、計16本の木材だ。
これで色鮮やかなグラデーションを描くのだと言う。

接着剤が固まらないように素早く木材を貼り合わせ、
上下、左右から圧力をかけ、1日乾燥。
大きな丸鋸で板を縦に割き、小さいのこぎりで横幅を整えていく。
木材に下絵を描く、清高さん。
その線に沿ってカットされると、
新アイテムの形が少しずつ明らかになっていく。

完成したのは、寄木細工のスピーカー。
音楽を流したスマートフォンを溝に入れると、
上の開口部より音が大きく、まろやかに広がる。
スタイリッシュなリビングに上質な音と時間をもたらす作品だ。

ただ直線ばかりでは面白くないので、
やわらかい印象のデザインにしてみました。
その微妙な匙加減は苦労しましたが、
つくるのが楽しかったですね。
ー 露木清高

スピーカーとしてだけでなく、インテリアとしても楽しめる逸品。
これぞ箱根寄木細工のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.020 寄木細工のスピーカー

ダイジェスト動画

放送第20回:寄木細工のスピーカー

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