セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第27回 癒しの灯で浴室を照らす和ろうそくのバスキャンドル

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古来、寺社仏閣などで使われてきた近江の伝統工芸「和ろうそく」。
静寂の空間で厳かに揺れる炎は、自然由来の素材と千数百年もの間受け継がれてきた職人の手仕事によって生み出される。
独特のやわらかな灯を活かしたニュークラフツは「和ろうそくのバスキャンドル」である。

和ろうそくの伝統

蜜蝋(みつろう)
贅沢品だったろうそく
やわらかな炎

今平安時代より続く「和ろうそく」の歴史

日本にろうそくがもたらされたのは奈良時代のこと。
当時のろうそくは、中国からの輸入品で、
原料は蜜蜂の巣から採れる蜜蝋(みつろう)。
とても高価で貴重な品であるろうそくを使えたのは
宮廷や大きなお寺など、一握りの特権階級のみだった。

平安時代になり遣唐使が廃止されると、ろうそくの輸入も途絶。
そこからろうそくの国内生産がはじまることに。
素材となったのは松のヤニ。
松ヤニでつくったろうそくが「和ろうそく」のルーツである。

やがて、江戸時代には琉球からもたらされた櫨(はぜ)が原料になり、
𥽜の栽培も各地に普及する。
しかし、ろうそくは依然として、庶民には高嶺の花。
裕福な商家や特別な行事、江戸随一の歓楽街・吉原などでしか
使われない贅沢品だった。

江戸時代の百科事典「守貞謾稿(もりさだまんこう)」に、
次のような興味深い記述がある。
「挑灯(ちょうとう)燭台(しょくだい)等すべて
燭(ともしび)の流れ余る蝋を買い集む。
風呂敷を負ひ(おい)秤(はかり)を携ふ(たずさう)」。
溶けて流れた蝋を買う「ろうそくの流れ買い」なる商売についての
記述である。
江戸の庶民はこの買い取った蝋に鯨の油などを混ぜてリサイクルし、
使っていたのだ。

明治時代には、西洋からもたらされた
価格の安い西洋ロウソクが大人気に。
さらに、電灯が普及すると、次第に和ろうそくの需要は減少……。
とはいえ仏事や祭礼などでは、
今も和ろうそくのやわらかな炎が静寂の空間を演出している。

和ろうそくの技術

原料の昭和福𥽜(しょうわふくはぜ)
玉締め式圧搾機で蝋を絞り取る
い草の茎で芯を作る
芯を固める「芯締め」
手で蝋をすくい塗り込む「下掛け」
蝋を練り、きめを細かくする
完成品

自然素材でつくられる最上級の品

自然由来の素材を活かした「和ろうそく」。
その主なものには、
東北地方の漆の実から採れる「漆蝋(うるしろう)」と
九州・四国地方の櫨(はぜ)の実から採れる「櫨蝋(はぜろう)」
などがある。

原料となる蝋づくりを見るために訪れたのは長崎県島原市にある
本多木蝋(もくろう)工業所。
三代目の本多俊一さんは、教師の傍ら、櫨蝋づくりに従事する。

本多さんが育てる櫨は長崎県の天然記念物に指定されている
昭和福𥽜(しょうわふくはぜ)という品種。蝋分が多いのが特徴だ。

蝋分があるのは、実の皮と種の間のわずかなところ。
これがろうそくの原料となる。ひとつの実から採れる蝋はごくわずかだ。

つぶした櫨の実を20分ほど蒸し、
玉締め式と呼ばれる方法で蝋を搾り取る。
江戸時代から変わらないこの製法を守るのは、
日本では本多さんのところだけだという。

搾り出した蝋を大きな鍋に移し、熱を加えて灰汁を取り、沈殿を待つ。
そして、上質な上澄みをすくい、型に流し込む。
これが、櫨の実だけを原料とする櫨蝋である。

続いては、和ろうそくの成形だ。

訪れたのは、琵琶湖の北西部に位置する滋賀県・高島市。
この地に店を構える「大與(だいよ)」は、和ろうそくの老舗。
伝統的な製法で和ろうそくをつくり続けている。

まずは、ろうそくの核となる芯づくりから。
つくるのは大西みよさん。なんと御歳90才である。

材料は畳にも使われる、い草の茎。
これは灯心草(とうしんそう)とも呼ばれ、
スポンジ状で蝋をよく吸うことから、古くより用いられてきたもの。

和紙の上に、灯心草を巻いて、真綿を巻き、
灯心草がほどけないように固定する。

芯先をしっかりと巻かないとダメ。
芯が、和ろうそくの土台ですから。
ー 大西みよ

やわらかな炎を生む熟練の技

大西みよさんがつくった芯を作業用の長い串に刺し、
その周りに高温で溶かした櫨蝋をつけていくのは、
孫で四代目の大西巧(さとし)さん。
この櫨蝋だけでつくられたものが最上級の和ろうそくとされている。

はじめに鍋に直接芯を入れ蝋をつけ、芯を固める。

続いて作業しやすいように高温の蝋を鉢に移し41度程度に温度を下げ、
手で蝋をかけ下地をつくる。
その際、一度にたくさんの本数を扱いやすくするツメと呼ばれる道具を
使いながら、手で蝋をすくい、手際良く塗り込んでいく。
その流れるような手さばきは一見簡単そうだが、
蝋のつき具合にムラが出ないようにするには、
熟練の技が必要とされるのだ。

蝋をつけては乾かし、少しずつ太くしていく。

ここからはいよいよ仕上げの段階。
葡萄櫨(ぶどうはぜ)という種類でつくった上掛け用の蝋と
天日干しした白蝋(はくろう)を鍋で溶かす。

蝋を練り、空気を含ませ、きめを細かくする。目安は色と柔らかさ。

融点など性質のちがう下掛け蝋と上掛け蝋を使うことで、
垂れにくい和ろうそくができるのだ。

蝋を溶かして芯を出し、長さをそろえるために、熱した包丁でカット。
ようやく和ろうそくの完成だ。
丁寧に塗り重ねてできる、年輪のような断面が、
手掛けろうそくの証である。

和ろうそくの大きな炎を見つめ、
その揺らぎに体のリズムを預けてみるだけで癒されますね。
いろんな使い方をしていただきたい。
ー 大西巧

和ろうそく × バスキャンドル

いつもより多めに蝋をつける
完成した和ろうそくのバスキャンドル
お皿にのせて湯船に浮かべる

浴室を癒しの空間に変えるニュークラフツ

今回、ニューアイテムづくりにチャレンジしていただくのは、
現代の生活に合った新しい商品を数多く生み出している大西巧さんだ。

アーツ&クラフツ商会からのオーダーは、
「日常生活で使える和蠟燭の良さを活かした癒しのアイテム」。

さっそく、下掛け作業にとりかかる大西さん。
いつもよりも多めに蝋をつけていく。
太くするため団扇で急いで乾かし、
唇に当て乾燥具合を確認しながら、作業を進める。

通常の工程と同じように、下掛けの次は上掛け。
いよいよ仕上げ。
いったいどんなニュークラフツができあがるのだろうか。

完成したのは、なんと「和ろうそくのバスキャンドル」。

バスルームに灯る、ふんわりゆらぐ大きな炎。
和ろうそくの特徴を活かしたニューアイテムだ。

お気に入りのお皿にのせて湯船に浮かべれば、
バスルームがたちまち癒しの空間に。

これ以上太くなってしまうと、垂れてしまいます。
なので、ろうそくと芯のバランスがギリギリのところを
目指してつくりました。
燃焼時間は短いですが、この炎を見て
リラックスしていただきたいですね。
ー 大西巧

古より続く伝統の灯で極上の安らぎを。
これぞまさに「和ろうそく」のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.027 和ろうそくのバスキャンドル

ダイジェスト動画

放送第27回:和ろうそくのバスキャンドル

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