セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第29回 使って楽しい三春張子のごみ箱

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木型に和紙を張り合わせ、一つひとつ丁寧につくられる張子。
300年の歴史を誇る福島の伝統工芸「三春張子(みはるはりこ)」の人形は、郷土人形の最高峰とされている。
江戸時代より続く伝統の技が生み出したニュークラフツは、古のデザインとアイディアが光る「三春張子のごみ箱」だ。

三春張子の伝統

300年の歴史を誇る三春張子
見得を切るポーズの人形
細部まで丁寧につくり込まれた道具

300年の歴史を誇る福島の伝統工芸

張子の技術が日本に伝えられたのは室町時代のこと。
張子づくりに使われたのは、当時高価だった和紙ではなく、
モノを書き損じたり、不要になった反故紙(ほごし)だったという。

江戸時代になると、その技術は全国に広まり、
よく知られる群馬の「高崎だるま」や、島根の「虎張子」のように、
各地で独自の発展を遂げた。

福島県の伝統工芸「三春張子」もそのひとつである。
遡ること約300年前の元禄時代。
帰農したある三春藩士が、
土を原料につくる仙台の堤(つつみ)人形の技法を取り入れ、
和紙で張子の面や人形をつくりはじめたのがそのルーツとされている。
農閑期を利用して張子をつくっていた彼らは、
いつしか専門の職人となっていった。

最盛期の江戸時代、「三春張子」には数千種類のデザインが存在し、
それらは当時流行した芝居や服装などが色濃く反映されていた。
三春町歴史民俗資料館には、
歌舞伎舞踊のある一場面を表現したかのような、
見得を切るポーズの人形など、
当時つくられた貴重な品が所蔵されている。

これらの作品に見られるような、
人をひきつける立ち姿も三春張子の魅力だ。
さらに注目すべきは小道具。
細部まで丁寧につくり込まれた道具は人形の表情を一層際立たせている。
その美しさは郷土人形の最高峰とされ、
やがて全国にその名が知られるようになった。

三春張子の技術

この地で300年続く老舗「本家 大黒屋」
和紙を木型の曲線に合わせて貼っていく
ストーブで乾燥させる
胡粉を刷毛で塗る
絵付けをする橋下彰一さん
顔の絵付け
完成品

心の動きをも映す繊細な作業

福島県のほぼ中央に位置する郡山市。
その深い山間に、人形づくりの職人を集めた
デコ屋敷と呼ばれる張子の里がある。
“デコ”とは、古くから土や木の人形をさす言葉。
現在この屋敷には、郷土民芸品をつくる工房が4軒あり、
それぞれ伝統の技を受け継いでいる。

今回訪れたのはそのうちの一軒、
この地で300年続く老舗「本家 大黒屋」。
二十一代目の橋本彰一さんに、伝統の技を披露していただいた。
橋本さんは、高校の美術教師を辞め家業を継いだ職人である。

張子づくりはさまざまな工程に分かれており、
大黒屋では分業制がしかれている。
最初の作業は和紙の糊付け。担当するのは遠藤佐和子さんだ。
和紙にはユネスコの無形文化財に登録されている
埼玉県の小川和紙を使用する。
ほかの和紙に比べ、ちぎりやすく、張子づくりに向いているという。

続いて、餅米を水で溶いた糊をつけ5枚の和紙を重ねたものを
木型に貼りつけるのだが、
その前に、糊をつけず水で濡らしただけの和紙を1枚貼る。
木型を抜きやすくするための工夫だ。

そして先程の重ねた和紙を手でちぎり、表面に糊を付けた後、
木型の曲線に合わせて丁寧に貼っていく。
足の裏などすみずみまでシワにならないよう、慎重に。

自分の機嫌が悪いときには良いものはできません。
心が落ち着いた状態じゃないと。
ー 遠藤佐和子

心の動きすらも反映されるほどに繊細な作業なのだ。

紙張りを終えたらストーブの前で乾かし、なかの木型を抜く。
重ねた和紙は硬く、切れ目をいれるのもひと苦労だ。
木型を抜いたら、接着剤で切れ目を貼り合わせ、
ずれないように輪ゴムで固定。その後、再びストーブで乾燥。
張子づくりには夏でもストーブが欠かせないのだという。

伝統を忠実に再現する職人の気概

続いての作業は「取り組み」と呼ばれる、
人形の立ち姿を決める重要なもの。
髪飾りとバチをつけるのは、小山三恵子さん。
バランスを見ながら細かな微調整を繰り返す。

形が決まったら、「胡粉(ごふん)塗り」。
絵付けのための下地をつくるのは、
御歳81歳の三瓶欣子(よしこ)さんだ。
胡粉と呼ばれる貝の粉を膠(にかわ)と水で溶いたものを、
刷毛で丁寧に塗る。
天日で数時間乾燥させ、再び胡粉を塗る。そしてもう一度……。
何度も塗り重ねることで滑らかな下地ができあがるのだ。

絵付けと仕上げを担当するのは、橋本さん。
制作中の人形には十種類の色を使用する。

まず手にしたのは赤色。
下書きはないが、代々続く人形を忠実に再現するため、
先代の作品を確認しながら慎重に色づけを進める。

着物の色塗りの次にとりかかるのは、細かい絵柄。
花や松など縁起のいい柄が三春張子の特徴でもある。

今なら、写真を参考にできますし、インターネットで調べれば
いろんな資料が見つかります。しかし当時の人は、実際に
見たのか見てないのかわからないものを
形にしていたわけですから、その想像力の豊かさには
いつも驚かされます。
ー 橋本彰一

さて、いよいよ最後の工程。
人形に命を吹き込む顔の絵付けだ。
ここでもまた、先代の作品を何度も確認しながら、筆を進めていく。

三春人形の特徴は繊細な目。
かなり細い線で描くので、毎回ちょっと緊張してしまいます。
ー 橋本彰一

4人の職人の手仕事を経て、ようやく完成した三春張子の人形。

まずは来て、見て、触れて、田舎の風景のなかで、
こういったモノづくりが受け継がれているということを
知ってもらいたいですね。
ー 橋本彰一

三春張子 × ごみ箱

ニューアイテム作りに挑む橋本彰一さん
完成した三春張子のごみ箱
起き上がり小法師のようになっている

動きも愛らしいニュークラフツ

三春張子のニュークラフツに挑むのは、
300年続く老舗工房の二十一代目、橋本彰一さんだ。

さっそく和紙に水を付け作業をはじめる橋本さんが手にした型は、
なんとゴムボール。
短冊状にした和紙を一枚ずつ貼っていく。
シワにならないように、引っぱりながら貼るのがポイントだ。

和紙は、柔らかいけれども、重ねることで硬くもなるでしょう。
そこが和紙という素材の面白さです。
ー 橋本彰一

紙を貼り終えたところで、ゴムボールの空気を抜いて取り出すと、
張子の球体ができあがった。

完成したのは、こちら。和室の隅に置かれた真っ白なフクロウ――。
実はこれ、なんと張子のごみ箱である。
モチーフの白フクロウは幸福を呼ぶ縁起物。
表面に使用されているのは、地元福島県の上川崎和紙だ。

フクロウの内部には重しが仕掛けられ、
起き上がり小法師(こぼし)のようになっているため、
倒れてもすぐに元に戻り、入れたゴミが出ないつくりだ。

飾って鑑賞するだけではなく、実際に使ったときの動きの面白さも
味わってもらいですね
ー 橋本彰一

見た目に可愛らしく、使って楽しい張子のごみ箱。
愛らしさはそのままに日用品へと姿を変えた。
これぞまさに、「三春張子」のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.029 三春張子のごみ箱

ダイジェスト動画

放送第29回:三春張子のごみ箱

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