セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第3回 食卓を彩る有田焼のクリスマスツリー

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約400年の伝統を誇る「有田焼」。
その乳白色のつややかな磁器は、古くはヨーロッパの王侯貴族をはじめ、今なお世界中の人びとを魅了し続けている。
今回、匠が手掛けたニューアイテムは、有田焼の新たな魅力を引き出す逸品。
「有田焼のクリスマスツリー」は、斬新なアイデアとやわらかな風合いで、ダイニングに安らぎをもたらしてくれる。

有田焼の伝統

泉山で採れた陶石
色鮮やかな磁器の湯呑

日本で最初につくられた磁器「有田焼」

有田焼とは、佐賀県の有田町で焼かれる磁器のこと。
その歴史は、今からおよそ400年前の1616年にさかのぼる。
李参平という陶工が有田の泉山で、磁器の原料となる陶石を発見。
こうして日本初の磁器は誕生した。

それまで主流だった陶器に比べ、石を砕いて作る磁器は、
とても硬く白くてつややか。
とくに泉山で採れた陶石は、カオリンと呼ばれる粘土質を含み、
高温で化学変化を起こすことで美しい質感を生み出す。

その誕生からおよそ30年が経ったころ、
有田焼に新たな美をもたらす男が現れた。
名工・酒井田柿右衛門である。
柿右衛門は、赤色をはじめとする
さまざまな色を磁器に焼き付けることに成功。
さらに、陶石に含まれる不純物をできる限り取り除き、
地肌の白さを追求していった。

こうして生まれたのが独自の乳白色を帯びた
「濁手(にごしで)」である。
その白さを存分に生かした色鮮やかな絵付けは、
柿右衛門様式と呼ばれ、海外でも人気を博した。
とくに当時、磁器の制作技術をもたなかった西洋では
「富の象徴」とされ、その美しさに魅了された王侯貴族たちは、
こぞって柿右衛門様式の磁器を愛玩するようになったという。

この有田焼の影響を受けたのが、ドイツのマイセンである。
自国で磁器を作ることを目標とした彼らは、
柿右衛門を徹底的に研究し技術習得に励み、
西洋で最初の磁器を作り上げたのである。

有田焼の技術

磁器の万年筆
ろくろ成型歴35年の秀良治さん
下絵付け
濃み(だみ)
絵付け
完成品

工程ごとに分かれた職人たちの技の結晶

訪れたのは250年以上続く有田の「源右衛門窯」。
約400年の伝統を受け継ぐ繊細なデザインが施された大皿や
日用使いの食器をはじめ、磁器では実現不可能と言われた
万華鏡や万年筆など、新たな試みにも挑戦している窯元だ。

有田焼は昔から工程が細分化された分業体制で作られてきた。
各工程に熟練の職人を配置して、全体のレベルを高く保つためでもある。
その最初の工程は、土練り(つちねり)だ。
窯で焼いたときに中の空気が膨張して破裂するのを防ぐため、
手で捏ねることで陶石内の空気を抜く。
この作業は、内側と外側の硬さが均一になるまで続けられる。

続いては、ろくろ。美しい成形の基本は、中心をしっかりとること。
手の感覚だけで土の状態をコントロールして、少しずつ形を作っていく。
ろくろ成型歴35年の秀良治さんが作ろうとしているのは花瓶だ。
胴が少し太く、間口が少し狭くなるまでおよそ15分。
手が届かないところは、へらやこてが使われる。
完成には、およそ1時間がかかる。

続く工程は、下絵付け。
あらかじめ薄い紙などを用いて図柄を転写したアタリをもとに、
細い筆で輪郭を慎重に書き込む。絵の具は、
窯で焼いたときに藍色へと変化する呉須(ごす)と呼ばれるもの。
筆圧を変えることで線描の太さを調節し、抑揚をつけていく。
下絵付け歴24年の馬場英樹さんの繊細な作業が続く。

同じ絵柄であっても、ベテランの人が書いたものには
味があります。
容易ではありませんが、その域に到達することが目標ですね
− 馬場英樹 −

形、色、つや……ひとつとして同じ物はない

下絵付けの次は、有田焼特有の手技、濃み(だみ)である。
このべた塗りの作業に使われるのは、
濃み筆というこれまた有田独自の太い筆。
その筆先を巧みに使い、わずかな空間を繊細に塗り込んでいく。

繊維の太い濃み筆に絵の具をたっぷり含ませて、ふっくらとした
筆の根元部分を指で押して、絞り出すようにして描く。
ポイントは「絵の具を均等に濃むこと」(濃み歴30年の福田直子さん)
だという。

濃みの次は施釉(せゆう)。
つややかに焼き上げるため、全体に均等な厚さに
釉薬(ゆうやく)をかける作業だ。
その後、水にくぐらせて釉薬が溜まった部分を洗い流し、
ようやく焼き上げ。
匣(さや)と呼ばれる器で作品を保護して隙間無く窯に詰める。
薪窯の場合、2日がかりで窯の温度を1300度まで上げていく。
すると釉薬は溶けてガラス質となり、
呉須は酸化して絶妙な色合いとなる。
焼き上がった磁器は、形や大きさ(約15%縮む)、
色合いが微妙に異なり、ひとつとして同じ物にはならない。

さらに、その上に絵付けが施される。
磁器の表面は硬くなっているので、下絵より細い線を書くことが可能だ。
上絵にも「濃み」があり、広い範囲を太めの筆で
巧みに塗りつぶしていく。

再び高温で焼き付けて、ようやく完成。
作業開始からおよそ1カ月。
幾多の職人の手を経て、
色鮮やかでつややかな輝きをもつ有田焼は生まれるのだ。
「源右衛門窯」代表の金子昌司さんは言う。

手でなければ表現できないものを作らなければ、
手仕事にこだわる必要はありません。
源右衛門窯が心がけているのは、自分の手元に置いて、
愛着がわくものを作ること」。手仕事でしかできない技を、
連綿と受け継ぐ有田焼の姿がここにある。
ー 源右衛門窯 代表 金子昌司 ー

有田焼 × クリスマスツリー

“新しい有田焼”を模索する作家 川崎精一さん
完成品
グラスとシャンパンクーラーに

磁器の特徴を生かした「有田焼のクリスマスツリー」

今回、新たなアイテム作りを依頼したのは、
有田で作家として活動している、川崎精一さんだ。
“新しい有田焼”を模索する川崎さんは、絵付けではなく、
“彫り”を生かした作品をづくり得意とする。

その作業風景を見せてもらう。
まずは、図案をトレーシングペーパーに書き写し、
それを器に転写させてアタリをつけ、専用の刀で少しずつ削っていく。
焼き上げる前の磁器が、柔らかく、とてももろいからこそできる作業だ。

先人たちが約400年もの長い時間をかけて、
築き上げてきた有田焼。
そこからさらに一皮むけた新たな“有田焼”を作り、
その幅を広げることで、この先の歴史を作って
行かなければなりません。
そういう意味では、今回の依頼は興味深く、
有田焼の新たな魅力を引き出せるのではないでしょうか。
ー 川崎精一 ー

さっそくろくろをひき制作に取りかかる川崎さん。木のようなモチーフを彫りはじめた。
「これ以上掘り進めたら貫通してしまう」というギリギリの薄さを
感じながら、絶妙な力加減でミリ単位の調整を施す。

制作を依頼してからおよそ1カ月、有田焼の新アイテムが焼き上がった。
緑色の釉薬がかかった美しい磁器の正体は、
有田焼のクリスマスツリーである。

完成したのは、内側からの光が
透かし彫りの雪の結晶を浮かび上がらせる淡い緑色が美しいツリー。
しかし、これはただの陶器のツリーではない。
上下2つに分解すると、先端はグラスに、
すその部分はシャンパンクーラーになるのだ。

陶器のランプシェード、あるいはグラスとシャンパンクーラーという
異なる2つの顔をもつ磁器のクリスマスツリーは、
その斬新なアイディアと豊かな風合いで、
華やかで温もりのある空間を演出してくれる。

アーツ&クラフツ商会 Lot.003 有田焼のクリスマスツリー

ダイジェスト動画

放送第3回:家庭に調和する
有田焼クリスマスツリー

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