セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第35回 上質な肌触りが魅力の小千谷縮のマスク

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「シボ」と呼ばれる独特のしわが、清涼感のある着心地をつくりだす小千谷縮(おぢやちぢみ)。
350年以上にわたって連綿と受け継がれてきた、伝統の技によって生まれたニュークラフツは、
極上の肌触りがさわやかな春のひとときを演出する「小千谷縮のマスク」である。

小千谷縮の伝統

苧麻からつくられた麻糸で織る
小千谷縮の独特のしわである「シボ」
将軍家の御用縮になるほど洗練された織物へと成長を遂げた

国の重要無形文化財にも指定される伝統の技

雪国の風土と350年以上の伝統の技によって育まれた「小千谷縮」は、
日本を代表する織物のひとつであり、
染織部門における国の重要無形文化財の第一号でもある。

越後地方ではかつて、麻の原材料となる
苧麻(ちょま)が群生していた。
繊維が強靭で、柔軟性に富んでいる苧麻は、
布をつくるには最適の素材。
やがて農村地区の女性たちの間で、
雪深い冬の時期に苧麻から麻糸をつくり、
着物を織るのが生業となっていった。

そもそも小千谷縮は、江戸時代のはじめころ
播州明石(ばんしゅうあかし)の浪人、
堀次郎将俊(ほりじろうまさとし)が越後に移り住み、
それまであった越後布(えちごふ)に彼の地元の明石縮の技法を
加えたものとされている。

その特徴は、なんといってもさらりとした肌触りにある。
汗をかいても肌に張り付くことのない着心地は、
緯糸(よこいと)に強い撚(よ)りをかけて縮(ちぢ)ませ、
独特のしわである「シボ」を出すことで実現される。

この技法は越後各地に広まり、急激に生産量が増加。
小千谷縮は将軍家の御用縮になるほど洗練された織物へと成長を遂げ、
その生産量は江戸時代中期には年間20万反を誇ったほど。
しかし、江戸時代後期になると、木綿・絹織物の普及にともない、
高級品だった縮は衰退の一途をたどった。

そんな小千谷縮に再びスポットライトが当てられたのは
昭和30年のこと。
その高い技術と文化的意義を鑑み、国が重要無形文化財に指定。
さらに、平成21年にはユネスコ無形文化遺産にも登録されたのだ。

小千谷縮の技術

小千谷縮技術保存協会の山岸良三さん
苧績み職人、黒崎キイさん
苧麻を麻糸になるように撚りあげていく「苧績み(おうみ)」
絣模様をデザインする伝統工芸士、横山芳則さん
麻糸に絣模様をつける「絣くびり」
小千谷縮独特の織り機「いざり機(はた)」
独特の縮を出すために丹念に布を揉み込む「湯もみ」
反物を雪の上にさらす「雪さらし」

熟練の技が紡ぐ1年にもおよぶ手仕事の結晶

すべての工程が昔ながらの手作業で行われている
重要無形文化財の小千谷縮。
麻糸の製法や、絣模様(かすりもよう)、織り機、
雪さらしにいたるまで、伝統の技が脈々と受け継がれているのだ。

小千谷縮技術保存協会の山岸良三さんは言う。

重要無形文化財は、すべて手づくりであることなどの条件があり、
なかなか数多くはつくれませんので、
ますます貴重なものになってきています。
これまで受け継がれてきたものですから、
これからも若い人に継承してもらって、残していきたい。
― 山岸良三

そんな熱い想いを抱く職人の技を見るべく訪れたのは
新潟県の中央に位置する小千谷市。
積雪が4mを超すこともある豪雪地帯である。

最初の工程は、「苧績み(おうみ)」。
手がけるのは苧績み職人、黒崎キイさん。御歳80歳。
この道30年のベテランだ。

苧績みとは、原料の苧麻を麻糸になるように
撚りあげていく作業のこと。これを「うむ」という。

まずは、130cmほどの苧麻を裂きやすくするため水に浸し、
それを髪の毛よりも細くなるまで爪の先で裂く。
細くなった2本の苧麻を指先で撚り合わせ、
結びながら1本の長い麻糸にする。

一見簡単そうにみえる作業だが、実はここに熟練の技が隠されている。
2本の苧麻の繊維を撚り合わせながら1本の長い麻糸にしたときに、
結び目がほとんど分からない点がポイント。
結び目が大きくなるほど、染色にムラができ、
織ったときの仕上がりに影響してしまうのだ。

ちなみに、この苧績みは、
熟練の職人でも8時間でおよそ5gをうむのがやっと。
一反織るのに必要な700gの糸を仕上げるのには、
実に9カ月以上かかるという、根気のいる作業なのだ。

熟練の職人たちによる手仕事の結晶

続いて、麻糸に絣模様をつける「絣くびり」。
絣模様をデザインするのは、
キャリア41年の伝統工芸士、横山芳則さん。
今回は、新潟県の鳥「トキ」がモチーフ。

設計図をもとに布幅に合わせて裁断した紙を目印に、
束ねた麻糸に印をつける。
このとき、印の部分に綿の糸を固く巻きつけることで、
染色した際、色が染まらずに奇麗な絣の模様が表れるのだ。
続いて、その絣くびりした糸を藍につけ、染める。

糸をはずしたときに、きちんと柄が残っていたときの
達成感がなんとも言えません。
さらに織ったときに柄がぴたりと合ってくれたら、最高です。
― 横山芳則

絣模様ができたら、「いざり機(はた)」へ。
この小千谷縮独特の織り機を操るのは小林千穂さんだ。

低い位置に座り片膝を前に、独特の格好で織る。
片足を引き横糸を通すと同時に、いざり機にかけた、腰紐を引っ張る。
糸が切れないように織りあげるのが、熟練の技の見せどころ。

このいざり機では、ベテランが1日かけても、
わずか15cmほどしか織れない。一反織るのに、およそ4カ月。
これも、重要無形文化財としての大切な条件なのだ。

続いては「湯もみ」。
織りあがった布を縮ませるための重要な工程だ。
約35度のぬるま湯に布を浸し、丹念に揉み込むことで、
「シボ」と呼ばれる独特の縮を出す。

湯もみ一筋45年の職人、戸田芳郎さんは言う。

シボが入りやすいのも入りにくいのもあるけど、
どんなときでもムラなく仕上げることが重要。
― 戸田芳郎

揉みあげた反物は、水洗いの後、昔ながらの方法で、
シボを整えるように絞り込む。極上の縮はこうしてつくられるのだ。

いよいよ仕上げ。「雪さらし」である。
雪国に日差しが増す2月半ばから3月にかけて、1週間から10日ほど、
反物を雪の上にさらす工程だ。

太陽の熱で雪が溶け、蒸発するときの水蒸気と
オゾンの漂白作用によって、布の白い部分がより白くなるのだという。

幾人もの職人の手を経て、
雪原に色鮮やかな重要無形文化財が浮かび上がる。
春を告げる小千谷の風物詩だ。

小千谷縮 × マスク

ニュークラフツづくりに挑む、山岸良三さん
完成した小千谷縮のマスク
柔らかで優しい着け心地

重要無形文化財のニュークラフツ

小千谷縮のニュークラフツづくりに挑むのは、山岸良三さんだ。

こういう発想はありませんでしたので、正直戸惑いました。
でも、異なる分野の方からのアイディアは、
新たなものが生まれるいい機会にもなります。
― 山岸良三

これまでにない柔軟な発想から生まれる、
まったく新しい小千谷縮のアイテムとは……。

山岸さんのデザインをもとに、
仕上げるのは小林千穂さんと高田久枝さん。

小千谷縮特有のシボがあるので、型紙どおりに裁断したり、
縫ったりするのが大変でした。
― 高田久枝

試行錯誤のうえに完成したのは、「小千谷縮のマスク」。
清涼感のあるデザインと、
縮ならではの柔らかで優しい着け心地が魅力。
花粉の季節にも最適の逸品だ。

マスクにした場合の肌触りが気になりましたが、
素材の柔らかさが生かされていて、
肌なじみもよく仕上がっていると思います。
― 小林千穂

雪国の風土と歴史に育まれた小千谷縮。
その最高品質の麻織物に包まれて心地よい春を過ごせるアイテム。
これぞ、小千谷縮のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.035 小千谷縮のマスク

ダイジェスト動画

放送第35回:小千谷縮のソープディッシュ

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