セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第39回 暮らし華やぐ越後桐下駄のお膳

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時代を超えて愛されるアイテム――下駄。
なかでも、寒さの厳しい新潟の風土に育まれた越後桐が使用された「越後桐下駄」は、細やかな木目が実に美しい。
そんな新潟が誇る伝統工芸のニュークラフツは、インテリアとしても映える「越後桐下駄のお膳」である。

越後桐下駄の伝統

花魁(おいらん)が履く「ぽっくり下駄」
鎌倉・室町時代の下駄(復元)
現在でも下駄は粋なアイテムとして、日本人に広く愛されている

約2000年の歴史をもつ下駄の変遷

奇抜なファッションでも知られる歌姫、
レディー・ガガが着用したことで、
一躍有名になった「ヒールレスシューズ」をご存知だろうか。
作者は日本人デザイナーの舘鼻則考(たてはな・のりたか)さん。
花魁(おいらん)が履く「ぽっくり下駄」から
インスピレーションを得たデザインだそう。

そんな世界が注目する下駄が、
日本で使われるようになったのは約2000年前。
弥生時代の下駄=田下駄(たげた)は
水田に足が沈まないようにするための農具だった。
やがて奈良時代になり、「唐」の風習が伝わると、
都の婦人が下駄を歩行用としても履くようになったという。

鎌倉・室町時代に主流だった、安定感のある下駄は、
主に排便用や雨の日に着物が汚れるのを防ぐためのもの。
天候にかかわらず庶民に広く利用されるようになったのは、
町人文化が華開いた江戸時代になってから。
「駒下駄(こまげた)」のほかにも、表面に「い草」がついたものや、
歩きやすくするため台が真ん中で分かれた中折れ下駄、
花街で愛用されていた「ぽっくり下駄」や「ミツバ下駄」など、
さまざまな下駄が誕生した。
花魁にとって、高さのある下駄は、
自分の地位を誇示する道具でもあったのだ。

一方、庶民の間で流行したのが、「差歯下駄(さしばげた)」。
台に歯を差し込んでつくるため歯が摩耗したら、
その部分だけを差し替えて、繰り返し使えるエコな一品。
それから約400年。
現在でも下駄は粋なアイテムとして、日本人に広く愛されている。

越後桐下駄の技術

下駄職人の小林正輝(まさあき)さん
木を機械で割る「木挽き(こびき)」
下駄一足分を切り出すための印をつける「墨掛(か)け」
センバと呼ばれる特殊な道具で削る
磨きを加えて木肌を整える
鼻緒をすげる
完成品

美しい木目を引き出す匠の技

新潟県新潟市で年に1度開催される、
日本最大のダンスフェスティバル「にいがた総おどり」には
欠かせないアイテムがある。
それは、新潟の伝統工芸「越後桐下駄(えちごきりげた)」。

訪れたのは、江戸時代にはじまったこの祭で使う下駄を
一手に手がける「小林履物店」。大正9年創業の和装履物専門店だ。
今回は、下駄職人として祭りを足元から支える
四代目の小林正輝(まさあき)さんに、
一般的な男性用駒下駄の制作過程を見せていただいた。

小林さんがまず手にとったのは、
樹齢15年以上の桐の木を30cmほどの長さに切った丸太。
ここに製材の目安となる線を引く。
この「木取り」と呼ばれる作業は、
木目の美しい桐下駄の善し悪しを決める重要なもの。

「木挽き(こびき)」を終えた木の表面には、
職人も驚くほど美しい木目が現われる。
桐下駄は、木目が細かくなるほど価値が上がるという。

余分な箇所を切り落とし、形を整えたら屋外に積み上げ、
1〜2年の間乾燥させる。
それは、変形を防ぐと同時に、雨風にさらすことで水に溶けやすい
「渋」をあえて表面に浮き出させるため。
変色した表面を削れば、桐本来の木目が再び顔を出す。

続いては、下駄一足分を切り出すための印をつける「墨掛(か)け」。
木取り同様、小さな傷を巧みに避けながら、線を引く。
この線に沿って糸鋸で切り出し、形を整えれば、
下駄の下地のできあがり。

ここで登場するのは、ぐつぐつと沸騰したお湯。
そこになんと、下駄を投入。
お湯で煮ることで、木の繊維が柔らかくなった下地を、
専用の包丁で表面を切断。
その断面と鋸で切ったものを比べれば、その差は一目瞭然。
この一手間が、なめらかな質感を生み出すのだ。

下駄に彩りを添える鼻緒

下駄づくりの真骨頂はここからである。

センバと呼ばれる特殊な道具で溝を掘るのは三代目の小林哲男さん。
簡単に見えるが熟練の技を要する作業だ。
小林さんによると、
これができる職人は今ではもうほとんどいないのだとか。

下駄の厚みを確認し、角を丸めたら、鼻緒の孔を開ける。
孔が少し斜めなのは、鼻緒を通しやすくするため。

次に孔を開けたのは後ろの歯。
ここに桐よりも硬いホウの木を差し込む。
こうすることで、歯が長持ちするのだという。それは高級品の証だ。

表面に鉋(かんな)をかけ光沢を出したら、
トクサで下駄を丁寧に磨き、鉋で面取り。
さらに、「砥の粉(とのこ)」と呼ばれる砥石を削った粉末で
下駄の表面を塗装。
水が通る孔を埋めることで、撥水性を高めるのだ。

この状態で1日乾燥させ、余分な砥の粉を落としたら、
さらに磨きを加えて木肌を整える作業。
使用されるのは、3種類の道具。

まずは、イボタロウムシのオスの幼虫が分泌した、蝋を擦り込む。
イネ科の植物などを束ねた道具で、
柔らかい部分を磨いてへこませると、みごとな木目が浮きあがる。
さらに、セトと呼ばれる道具で艶を出したら磨き作業は完了。
木肌はさらなる艶やかさを獲得した。

そこにすげるのは新潟県の伝統工芸、
小千谷縮(おぢやちぢみ)の鼻緒。実に贅沢だ。
すげる前に、まずは中の綿を適量抜き、太さを調整する。
孔に紐を通し一巻きしたら、しっかりと締め、輪をつくる。
これで鼻緒の支度が完了。

同店で鼻緒をすげる際、お客の足に合わせて鼻緒を調整するため、
長い時間履いても足が痛くならないと評判だ。

50を超える工程を経て、駒下駄はようやく完成。

この部分は履き心地にいちばんかかわるところですし、
さらに彩りを加えるという意味でも重要なところ。
桐の素材感を感じていただきたいですね。
ー 小林正輝さん

越後桐下駄 × お膳

ニュークラフツづくりに挑む小林正輝さん
完成した越後桐下駄のお膳

木目をいかしたとっておきのアイテム

ニュークラフツづくりに挑むのは、小林正輝さん。
山葡萄のつるや印伝(いんでん)の鼻緒を用いた下駄から、
現代の生活にフィットするゴム付きのものまで、
あらゆる下駄を製作してきた職人だ。

今回のオーダーは
「家のなかで使えて、なおかつ部屋がおしゃれになるもの」。
小林さんはどんな越後桐下駄のニュークラフツを
つくってくれるのか――。

オーダーから待つこと1週間。
完成したのは、和食から洋食まで
幅広いシチュエーションにマッチするモダンな桐のお膳。
材料は越後桐下駄と同じく桐。
差歯下駄のように、四隅に足を据えた頑丈なつくりのこのお膳は、
足駄(あしだ)とも呼ばれる差歯下駄からインスピレーションを
受けたものだと言う。

木のぬくもりや、美しい木目など、
木ならではの素材感を愉しんでいただけたら嬉しいですね
― 小林正輝さん

桐の木目が市松模様のように美しく、
和室に置けば立派なインテリアにもなる。
これぞ「越後桐下駄」のニュークラフツだ。

アーツ&クラフツ商会 Lot.039 越後桐下駄のお膳

ダイジェスト動画

放送第39回:越後桐下駄のお膳

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