セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第4回 気品漂う藍染めの木製トランク

TOP > 作品アーカイブ > 第4回 気品漂う藍染めの木製トランク
古来日本人にとって特別な色である藍色。
そのニュアンスのある色は、昔ながらの技法にこだわる職人の精魂込めた手仕事によって、今に伝えられている。
そんな伝統の技で染められた木製トランクは、リビング空間に上品なアクセントをもたらす。

藍染めの伝統

蓼藍(たであい)
藍染めが生み出す藍色

縁起良く、実用的だった「藍染め」

藍染めとは古来、世界各地で行われてきた染色技法のこと。
その原料は主にインド藍、タイセイ、ウォードといった植物で、
日本では古くから蓼藍(たであい)が使われてきた。
藍染めが生み出す藍色は、淡い色から濃紺まで変化に富み、
その色彩の豊富さは“藍四十八色”と称されるほどである。

この色は鎌倉時代の武士にとって特別な存在であり、なかでも、
きわめて濃い「褐色(かちいろ)」を好んで身につけたという。
その理由は、「褐色」が「勝色」と読めることから、
戦の際の縁起を担いだため、ともいわれている。

加えて「褐色」の着物を着ていると虫に刺されにくい、という実用性も。
これは藍のもつ防虫効果によるもので、
以降、鎧の下着として盛んに用いられることになった。

江戸時代になり木綿が普及すると藍染めは着物から足袋など、
庶民の暮らしのなかにも浸透していった。
そのため、染め物を扱う職人・紺屋(こうや)が大繁盛。
全国の城下町には紺屋の集まる
紺屋町(こんやちょう)が続々と誕生した。
なかでも江戸神田の紺屋町(こんやちょう)は有名で、
その光景は歌川広重の「名所江戸百景」にも描かれている。

そんな日本の藍染め文化に驚いたのが、
イギリス人化学者ロバート・ウィリアム・アトキンソンである。
日本の染料を研究していたアトキンソンは、
日本人がさまざまなものに藍色を使っていることに注目。
その色彩を「ジャバンブルー」と呼び、世界に広めたのだ。

藍染めの技術

蒅(すくも)
藍師の佐藤昭人さん
白花小上粉
染師 矢野藍秀さん
藍の花
藍染めの着物

手間をかけるほどに深みを増す藍の色

藍染めは、いかにしてつくられるのだろうか。
その工程を知るべく訪れたのは、徳島県の吉野川(よしのがわ)流域。
江戸時代より原料・蓼藍(たであい)の栽培が
盛んに行われてきた場所だ。

工程は、蓼藍を「蒅(すくも)」と
呼ばれる状態にするところからはじまる。
この「蒅」こそが藍色を生み出す重要な鍵となる。

毎年6月から7月にかけて刈り取られる
蓼藍(たであい)の葉を、天日に干して乾燥させる。
乾燥したら、1メートル程の高さに積み上げ「ふとん」と呼ばれる
ムシロを被せ、藍の葉を寝かせる。
そこに、水をかけ、混ぜる作業を繰り返すことおよそ100日。
藍の葉は発酵し、藍色を生み出す成分へと変化。
これが藍染めの原料である「蒅」となる。

発酵により熱をもった「蒅」は70度近くにもなることも。
熟練の藍師ともなれば、
その臭いと手触りで発酵の度合いを確かめるという。

「藍の製造にこれだけ手間をかけているのは私の家だけ。
とくにうちは白花小上粉(しろはなこじょうこ)という
一番純粋なものを使っているので、より難しいのです」と語るのは、
藍師の佐藤昭人さん。19代にわたり、蒅づくりを守り続けてきた
名工だ。

蓼藍のなかでも栽培が難しいとされる
上質の「白花小上粉」を使うのは、今では佐藤さんだけ。
化学染料に押され、これまで何度も廃業の岐路に立たされてきた。
それでも続けてきたのは、譲れない信念があるからこそ。

私らに、失敗は許されません。
うちがやめたら、本物の伝統技術がなくなってしまいますから。
それは先祖に対しても申し訳ないでしょう。
ー 佐藤昭人ー

こうしてつくられる「蒅」は、全国の染め師のもとへと運ばれていく。

天然素材だけで染めるこだわりの技法

矢野藍秀さん(本藍染矢野工場・染師)もまた、
江戸時代より変わらぬ技法で、藍を染める職人だ。
その技法は、「天然発酵建(てんねんはっこうだて)」と
いわれる化学薬品を一切使わない、昔ながらのもの。

まずは、樫の木の灰にお湯を加えて溶かす。
数時間置くと灰は沈殿し、上澄み液はアルカリ性の灰汁(あく)となる。
ここでようやく佐藤さんの手による「蒅」が登場する。
丹念に手でほぐした「蒅」を灰汁のなかへ……。

甕のなかでは「蒅」に含まれる藍色の色素が
布に付着しやすい状態に変化。
毎日、数時間をおきに撹拌を行うこと1週間。

かき混ぜたときに現れる泡――「藍の花」は、染め師にとって
藍の状態を見極める重要なもの。
その大きさや色の濃さで、藍の状態がわかるのだという。
さらに手で触れ、口に含んで藍の状態を細かく確認する。
これらはすべて天然の原料を使っているからこそできること。

素手でさわった藍のぬめりや温度、手についた色の落ちやすさで、
藍の仕上がり具合がわかります。
染師にとって手はアンテナのようなものなのです。
ー 矢野藍秀 ー

こうした手間ひまをかけた工程を経て、ようやく「染め」の作業へ――。

長い工程を経て完成した「勝ち色」の気品

生地に細かく正確に針を入れ、糸を引き縛り上げ、
これを藍で染め、そして糸をほどく……。
そこに現われる丸や線で描かれた、いくつもの文様。
これらはすべて藍染めの代表的な技法、「絞り染め」によるものだ。
これら美しい文様は、繊細で正確無比な作業の賜物。
総絞りの着物ともなれば、その制作に1年近くもかかるという。

長い行程を経て染め上げられた「勝ち色」の着物に漂う気品と美しさ。
矢野さんら職人の、昔ながらの藍染めへのこだわりから
生まれた気品と美しさに思わずため息がもれる。

本物の藍染めを後世に残していくためには、
私が受け継いだ昔ながらの技法をしっかりと貫き、
次世代へとバトンを渡すこと。
そして、また次の世代へ……。それが理想ですね。
ー 矢野藍秀 ー

伝統を頑なに守りつづける人びとの手により、
“ジャパンブルー”は次の世代へと受け継がれていくのである。

藍染め × 木製トランク

舞工房 多田正義さん
木の板を編み上げていく
完成品

独特の風合いを醸す「藍染めの木製トランク」

伝統の技法にこだわった藍染めが
どのようなアイテムに生まれ変わるのだろうか。

「通常、藍染めといえば布ですが、天然素材ならどんなものでも
染められるので、最近は木材を染める依頼も増えています」と話す
矢野さんが手にしていたのは薄い木の板。
藍に染められた高級感のある
メイプル材の木目が独特の雰囲気を醸し出す。

この藍染めの木を生かした新アイテムの制作を依頼したのは、
徳島で活躍する木工職人グループ「舞工房」だ。
徳島は、古くから木工業の盛んな地域。「舞工房」では
設計・塗装などの職人が知恵を出し合い、独自の商品を開発している。
同工房の代表、多田正義さんは言う。
「この世に無いものをつくるというのは、
職人にとってはやりがいのあること。
素晴らしいものができると思います」。

先ほど矢野さんが染めた木の板を、1センチほどの幅で細長くカット。
さらにそれらを並べて網のように編み上げる。
それを指物師が丁寧に枠組にはめ込んでいく――。

完成したのは、
木工と藍染めのコラボレーションによって生まれた新たなアイテム。
伝統工芸・藍染めの可能性を広げる「木製トランク」だ。
藍染めの編み込みが和のテイストを添えるトランクは、
収納インテリアとしても、リビング空間に
上品なアクセントを加えてくれる。
伝統のジャパンブルーを帯びた、
藍染めのニュークラフツがここに誕生した。

アーツ&クラフツ商会 Lot.003 藍染めの木製トランク

ダイジェスト動画

放送第4回:気品漂う
藍染めの木製トランク

作品アーカイブに戻る