セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第40回 ニッポンの夏を涼やかに灯す水府提燈の風鈴

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堅牢で質実剛健な提燈として、江戸の昔より庶民に愛されてきた「水府提燈(すいふちょうちん)」。
昨今ではモダンなデザインを取り入れ、現代空間にマッチする照明器具としても注目を集めている。
茨城県水戸市が誇るそんな伝統工芸のニュークラフツは、夏の風情を感じさせる「水府提燈の風鈴」だ。

水府提燈の伝統

江戸の昔より愛されてきた、堅牢な水府提燈
モダンな空間ともマッチする、スタイリッシュで斬新なデザイン

進化する伝統の照明器具

「日本の三大提燈」をご存知だろうか。
それは、盆提燈として名高い岐阜県の「岐阜提灯」、
福岡県の「八女(やめ)提灯」、茨城県の「水府提燈」の3つ。
なかでも、堅牢な提燈として江戸の昔より愛されてきたのが、
「水府提燈(すいふちょうちん)」だ。
昨今では、現代アートとのコラボレーション作品が注目を集めるなど、
モダンな空間ともマッチする新たな照明器具として進化を続けている。

そもそも中国から伝わり日本で独自に発展した提燈は、
室町時代のころには貴族や、武士、僧侶など上流階級が使用する
庶民には手の届かない高価なものだった。

その後、折り畳めて携帯可能な簡易型に改良され、
ロウソクの大量生産によってさらに普及。
江戸時代には照明器具として、庶民の生活に欠かせないものとなった。

ちょうどこのころ、
提燈づくりは傘づくりとともに武士の内職として定着。
「水府提燈」――“水府”とは“水戸”の別称――もまた、
水戸藩の下級武士による内職がそのはじまりだった。

丈夫で長もちすることで知られた水府提燈は、
江戸はもとより、関東・甲信越、東北地方でも人気を博すことに。
全盛期には水戸には30店以上の提燈問屋が軒を連ねていたという。

そして昨今、水府提燈は、古き良き伝統を受け継ぎながら、
スタイリッシュで斬新なデザイン性を取り入れ、
現代の暮らしを優しく包み込む“灯り”を生み出している。

水府提燈の技術

竹ひごの先端を削る
型の目に、リング状にした竹ひごをかける
和紙を貼る
提燈に模様を描く
提燈の上下に化粧輪をつける
完成品

歴史ある町に残る伝統工芸

水府提燈の職人技を知るべく訪れたのは茨城県水戸市。
水戸黄門や日本屈指の梅の庭園「偕楽園」などで知られる
歴史ある町で、提燈をつくり続けるのは、
創業150年の老舗、鈴木茂兵衛(もへい)商店である。

堅牢で知られる水府提燈。
その伝統の技を職人の高見諭(さとし)さんに見せていただいた。

まずは水府提燈の屋台骨となる、竹ひごの加工から。

提燈の円周の長さに合わせて切った32本の竹ひごの先端を、
0.5mmほどの薄さに削る。
ここまで繊細な作業にこだわるのは、
「接合部分の段差をできるだけ滑らかにするため」(高見さん)。

リング状にした竹ひごのつなぎ目に
和紙をていねいに巻き付けて糊でとめる。
均一に丸みをつける「ためす」と呼ばれる作業を終えたら、
提燈の型の組み立て。
8枚の型がずれないように、輪をはめてしっかりと固定する。
組み上げた型の目に、先ほどリング状にした竹ひごをかける。
型に合わせて竹ひごの長さを調整し、不要な部分はねじって折る。

続いて、リング状にした竹ひごを、糸で巻き付け固定する「糸かけ」。
これが“堅牢で質実剛健”な水府提燈を生むのだ。

堅牢な提燈を生む伝統の妙技

骨組みができたら「糊付け」。
昔ながらのでんぷん糊を適量まんべんなく塗る。
続いては「和紙貼り」。
貼りやすいように、あらかじめ水で濡らしておいた和紙を型に合わせ、
指先でなでるようにしっかりと貼る。
簡単そうに見えるが、絶妙なさじ加減が必要とされる重要な工程だ。

薄い紙の場合、糊が強すぎると固まって割れたりしますので、
糊の濃度や量による微妙な調整が必要です。
― 高見諭

余分な和紙をカミソリで切り落とす「紙断ち」では、
見た目が美しくなるように紙が重なり合う糊しろの部分を最小限に。
ここにも、繊細な熟練の技が生きている。

竹ひごなどは自然素材なので、
なかなかこちらの言うことを聞いてくれません。
そこをいかにコントロールするのか。腕の見せどころです。
― 高見諭

提燈に模様を描くのは、
文字や絵柄など、デザインを担当する板垣翠(みどり)さん。
昔ながらの手書き文字を得意とする職人だ。
ちなみに、絵の腕前は個展を開くほどだとか。

板垣さんが描いたのは、屋号である「鈴木茂兵衛商店」の文字。
強さと優しさを兼ね備えたオリジナルのデザインだ。

かっこいい昔ながらの文字と、今の時代に合った技術を
組み合わせながら、新たなデザインを生み出していきたいですね。
― 板垣翠

ここでようやく、竹ひごの間にヘラで筋を入れ、
折り目をつける「折りたたみ」。
提燈づくりの真骨頂ともいえる工程である。
弱過ぎず、強過ぎず……。竹ひごから和紙がはがれないよう、慎重に。
最後は、提燈の上下に化粧輪をつけてできあがり。
折り畳めば半分ほどにもなる、丈夫な水府提燈が完成した。

水府提燈 × 風鈴

細かな検討を重ね、これまでにない作品づくりに挑む
完成した水府提燈の風鈴

夏にふさわしい提燈のニュークラフツ

今回、ニュークラフツづくりに挑むのは、
鈴木茂兵衛商店八代目、鈴木紘太さんと
同店の専務取締役、由元君平さん、そして板垣翠さんの3名。
鈴木茂兵衛商店の精鋭たちである。

“夏にふさわしい提燈”というオーダーを受け、
色やカタチ、サイズなど、細かな検討を重ね、
これまでにない作品づくりに挑んだ。

八代目紘太さんが丁寧に和紙を張り、
板垣さんがオリジナルのデザインを描く……。
夏の風物詩を連想させる提燈のニュークラフツとは?

完成したのは、なんと「水府提燈の風鈴」。

風に揺れる提燈の灯りと風鈴の涼やかな音色――。
夏の風情を存分に愉しめるみごとな仕上がりとなった。

夜も昼も楽しめるような、風情あるいいものができたと思います。
― 鈴木紘太

伝統の可能性を広げる、
これぞまさに「水府提燈」のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.040 水府提燈の風鈴

ダイジェスト動画

放送第40回:ニッポンの夏を涼やかに灯す水府提燈の風鈴

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