セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第41回 生活にあわせ形を変える岩谷堂箪笥のキューブチェスト

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およそ230年前に誕生した「岩谷堂箪笥」は、
木部加工、漆塗り、金具彫刻という3つの職人の技が結集した民芸箪笥の代表だ。
脈々と受け継がれてきた岩屋堂箪笥のニュークラフツは、遊び心あふれるキューブチェストだ。

岩谷堂箪笥の伝統

素朴で堅牢なつくりの岩谷堂箪笥(いわやどうたんす)
暮らしを彩るインテリアとしても人気を集めている

平泉文化の職人技を活かした新たな産業

和装衣類を収納する日本生まれの家具、和箪笥。
現在、全国8カ所の箪笥が日本の伝統的工芸品として
指定を受けている。
なかでも、素朴で堅牢なつくりから、
民芸箪笥の代表とされているのが、
岩手県の岩谷堂箪笥(いわやどうたんす)だ。
その起源はおよそ230年前の江戸時代。
当時最大と言われた「天明の大飢饉」の惨状を目の当りにした
岩谷堂城主の岩城村将(いわきむらまさ)は、
新たな産業を興すため、家臣の三品茂左衛門(みしなもざえもん)に
木工家具の商品化を命じる。

岩谷堂地方は平安時代に平泉文化を築いた
藤原清衡(ふじわらのきよひら)が居を構えた地であり、
中尊寺などの建立のために京より招いた職人の技術が、
江戸時代まで脈々と受け継がれてきた。
その技術を活かし、この地方の名産であるケヤキや漆、
鉄を用いた岩谷堂箪笥が誕生したのだ。
今ではその伝統を活かしつつ、現代の生活にあった家具へと発展。
暮らしを彩るインテリアとしても人気を集めている。

岩谷堂箪笥の技術

木材は割れや反りを防ぐため、およそ2年間乾燥させる
棹(さお)を使って木取りをする
板を接合するときに必要な溝をつくる
漆を塗っては拭き取る作業を繰り返す
タガネを使って下絵のとおりに彫り進め、金具を作る
金具を箪笥に取り付ける
完成品

木の特性を見極める精緻な技術

岩手県奥州市でつくられる岩谷堂箪笥の製作工程は3つ。
作業ごとに職人が替わる。
今回は手打ち金具を用いた岩谷堂箪笥の製作過程を追いながら、
その技を紹介する。

まずは最初の工程、木部(もくぶ)加工から。
木材は割れや反りを防ぐため、風通しの良い積み方、
桟積(さんづ)みで、およそ2年間乾燥させ、その後、
10日ほどかけて、人工乾燥を行い、ふたたび天然乾燥させる。
今回使うのは樹齢100年以上のケヤキ。
伝統工芸士の梅原新吉(うめはらしんきち)さんは、
慎重に選んだ木材に、墨壺で印をつけていく。
ここで、梅原さんが取り出したのは、線が引かれた、1本の木材だ。

昔からこの棹(さお)と呼ばれる道具を
図面の代わりとして使用しています。
— 梅原新吉

箪笥に棹をあてると、書かれている線が、
箪笥の高さや引き出しの位置にぴたりとはまるようになっており、
裏側は引き出しの幅や仕切り板の位置を示している。
棹は箪笥ごとにあり、昔は字が読めなくても
棹さえあれば箪笥をつくれたのだそう。
1枚の板から取れるのは、天板と側面が1枚ずつ。
岩谷堂箪笥をつくるのに、
樹齢100年以上の木の板が5枚も必要となる。

続いては職人の腕の見せどころとなる組手加工。
板を接合するときに、必要な溝をつくる工程だ。
まずは板に加工用の印をつけ、それをもとにノコギリで線を入れる。
角は毛引(けひ)きと呼ばれる道具で、6ミリ幅に線を引く。
突起が仕上がると、あわせる板に形を写し、先程と同様に溝を削る。

あまり加工部分があい過ぎても、緩くなってもよくないんです。
きつくすると木材が割けてしまう。
ちょうどいい大きさに組みあわせる必要があるんです。
— 梅原新吉

パーツができあがったら一気に組上げ。
彫った溝があうか、緊張の一瞬だ。
次に桐材を使った引き出しづくり。
桐は適度に湿気を吸い、膨張するため、内部を密封し、
衣類をカビなどから防ぐ効果があるのだという。
最後に、仕上げのカンナ掛けをし、寸分違わず、引き出しを入れこむ。
約1カ月で、木目の美しい箪笥の木地が完成。

乾燥と塗りを繰り返す漆塗り

箪笥は漆塗りの職人の佐藤司(さとうつかさ)さんの手へ。
まずは箪笥の表面にできた傷を確認し、
サンドペーパーで表面を滑らかに削る。漆塗りに埃は厳禁。
隔離された別室に移し、「きべら」で漆を塗る。
今回行うのは、木目の風あいを生かす代表的な
拭漆塗(ふきうるしぬり)。
余分な漆を布で拭き取ることから、拭漆塗と呼ばれているのだそう。

すべての面の漆塗りと拭き取りが終わったら、漆室(うるしむろ)
と呼ばれる湿度約70パーセントの部屋で1日乾燥。
漆は水分を吸うことで固まるため、
一定の湿度と温度を保つことが必要となるのだ。

翌日、室から出した箪笥に、サンドペーパーをかける。

漆を塗るとき、埃などがついているとざらつくため、サンドペーパー
を使うんです。余分な埃を取りながら漆を塗っていきます。
— 佐藤司

漆を塗る回数が多くなるほどつやが出るため、
塗っては拭き取る作業を繰り返し、10日ほどかけ、7回漆を重ねたら、
最後の仕上げとしてもう一度漆を塗る。室で一日乾燥させたら完成だ。

続いての工程は、金具製作。
伝統工芸士の及川洋(おいかわよう)さんはわずか数人しかいない
岩谷堂箪笥の金具職人。金具の下絵も金具職人が描くのだ。

花や鳥など実際にあるものは、
モデルと同じように描かなければならないんですが、
龍や唐獅子などは、本物がない分、楽かもしれないですね。
— 及川洋

まずは、下絵を厚さ1mmの銅板に張りあわせ、タガネを使って、
下絵のとおりに彫り進める「線彫り」の作業。
模様を入れ、最後に龍に目を入れると、彫りの完成だ。

続いて鉛の台と先端が丸くなった道具を使い、
細かい部分を裏側から金槌で叩く「浮き出し」を行うことで、
平面的だった「彫り」が立体になる。
最後に絵柄を切り抜いて、仕上げ。
金具を硫化カリウム水溶液に浸し、酸化させ、重曹で磨く。
あえて酸化させることで、変色を防ぐのだ。

そして、いよいよ金具を箪笥に取り付ける。製作からおよそ2ヵ月。
古から続く職人の手仕事を集結し、岩谷堂箪笥がようやく完成した。

岩谷堂箪笥 × キューブチェスト

ニュークラフツ作りに挑む八重樫公人(やえがしきみひと)さん
完成した岩谷堂箪笥のキューブチェスト

シーンにより形を変える岩谷堂箪笥のニュークラフツ

今回、ニュークラフツづくりに挑むのは、
岩谷堂箪笥 伝統工芸士会の会長である
八重樫公人(やえがしきみひと)さん。
現在、主流となっている機械加工で製作する。

一体どんなニュークラフツができあがるのだろう。

そしてついに、完成した岩谷堂箪笥のニュークラフツは、
「キューブチェスト」である。
全体を拭漆塗で仕上げ、そこに女性に人気のあられ金具を施した。

自分で重ねてみたり階段状にしたりと、遊び心のある箪笥です
— 八重樫公人

伝統の和箪笥を、現代の生活に寄り添う形に生まれ変わらせた
キューブチェスト。
これぞまさに岩谷堂箪笥のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.041 岩谷堂箪笥のキューブチェスト

ダイジェスト動画

放送第41回:生活にあわせ形を変える岩谷堂箪笥のキューブチェスト

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