セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第42回 粋な仕掛けがほどこされた江戸表具の賞状ケース

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もともとは、仏教の教典などを飾るものだった表具。
京都から江戸に伝わり、町人文化が栄えた元禄時代を経て、江戸表具は完成した。
掛け軸をはじめ屏風や襖など、さまざまに暮らしを彩る江戸表具のニュークラフツは、「江戸表具の賞状ケース」である。

江戸表具の伝統

古くから日本の暮らしを彩ってきた表具
書画をより美しく引き立てる技法として今に受け継がれている

教典や巻物を飾る中国の技法が起源

表具とは、布や和紙などを用いた装飾品のこと。
掛軸をはじめ、屏風や襖など、古くから日本の暮らしを彩ってきた。

その起源は、中国・南北朝時代につくられた巻物だといわれており、
日本には6世紀に仏教の経典や書画とともに、
それらをきらびやかに装飾し、掛け軸などにする技法がもたらされた。
写経が国の事業になった奈良時代には、教典を書き写す職人と、
それを巻物に仕立てる職人が現れる。

さらに、鎌倉から室町時代にかけて広まった「床の間」文化が、
表具の普及に拍車をかけ、「茶の湯」が登場すると、
床の間に飾る掛け軸を設える職人「表具師」が誕生した。

江戸時代には、表具師は掛け軸や巻物だけではなく、
屏風や襖なども手掛けはじめた。
そもそも表具は、寺や神社が集中する京で発展したものだが、
大名などの江戸屋敷増築にともない、
お抱え職人が上方から江戸へ召集される。
やがて町人文化が花開く元禄時代になると、
小粋な色や模様が特徴の江戸表具が、人気を博すようになった。
その後、書画をより美しく引き立てる技法として
今に受け継がれている。

江戸表具の技術

この道55年の表具師、石井弘芳さん
本紙を引き立てる裂地を選ぶ
生麩糊を裏打ち用の和紙に塗る
糊を塗った和紙を中廻しの裏側に貼り、裏打ちを施す
本紙全面を覆う中廻しを貼りつける
軸棒に表具師の名を書き入れる
完成品

主役を輝かせるための入念な布地選び

東京・東上野の石井三太夫表具店は、
360年以上の歴史を誇る江戸表具の老舗。
店主は、15代目の石井弘芳(いしい ひろよし)さん、71歳。
この道55年の表具師だ。
初代石井三太夫は、江戸時代に活躍した京都・本願寺の御用表具師で、
当時の掛け軸の棒は今も大切に保管されている。

今回、石井さんが手がけるのは、清水寺を描いた掛け軸。
掛け軸は、
主役である本紙の上下(うえした)を飾る「一文字(いちもんじ)」、
本紙全体を覆う「中廻し(ちゅうまわし)」、
上と下を彩る「上下(じょうげ)」、
上から垂らす「風帯(ふうたい)」を、
それぞれ「裂地(きれじ)」と呼ばれる布からつくり上げる。

まずは、中廻し用の裂地を選ぶ作業から。
300以上ある西陣織のなかから本紙を引き立てる柄を選別する。
作品全体を覆う中廻しは、本紙の見え方に大きな影響を与えるため、
裂地選びはとくに入念に行われる。

清水寺の舞台を主体にした、
京都のしっとりした画だと思いました。
色のある画でしたので、
バランス的にもひきしまる下地を選んだつもりです。
— 石井弘芳

美しさだけなく強度を増すための工夫

中廻し以外、一文字や風帯、上下の裂地も決まったあとは、
いよいよ掛け軸づくり。
最初に中廻しを裁断し、本紙との配置を決める。
布は濡れると縮むため、裂地の裏側をあらかじめ水で濡らし、
縮ませておく。
同様に一文字や上下に使う裂地にも水を吹きかける。
乾燥させている間に、小麦粉のデンプンを弱火にかけ、
水で溶いた生麩糊(しょうふのり)を準備する。
これを裏打ち用の、丈夫で薄い手漉き和紙に塗る。

次に糊を塗った和紙を中廻しの裏側に貼り、裏打ちを施す。
こうすることで、中廻しの素材である絹のほころびや型崩れを防ぎ、
長持ちするようになるのだ。
同じように、一文字などほかの裂地にも裏打ちし、乾燥させる。

続いては、本紙の裏打ち作業。
まず本紙の裏側に水分を含ませ、糊付けした和紙を慎重に貼っていく。
和紙を貼ることで本紙は強度が増し、保存性も高まるのだ。
裏打ちをした本紙は、
柿渋の塗られた専用の板に張りつけ、乾燥させる。

二度裏打ちを施した本紙と裂地が乾いたら、いよいよ切り継ぎ。
一文字の裂地をサイズに合わせて切り、およそ3ミリの幅に糊を塗り、
本紙に貼りつけ、その上を金槌で叩き、より密着させる。

本紙の上と下に、銀箔(ぎんぱく)の一文字が貼られてからが、
表具師の真骨頂。本紙全面を覆う中廻しの貼りつけ作業。
最初に柱と呼ばれる裂地を本紙の左右に貼り、
次に本紙の上と下にも裂地を貼りつける。
重なり合う部分の柄を合わせる必要があり、
職人が最も神経を使う瞬間だ。

掛け軸づくりにおいて四方の裂地を合わせるのは難しい作業です。
頭のなかで全体像を、しっかり考えておかないと、
カットするときに無駄ができてしまうんです。
— 石井弘芳

続いて掛け軸の一番上と下に無地の裂地を貼りつける。
数珠を使って裏摺りを行い、柔軟に仕上げていく。
次に軸棒に飾る軸先(じくさき)を選ぶ。
漆器や焼き物、シルバーなど、
さまざまな材質でつくられたもののなかから、
掛け軸に最もふさわしい軸先を吟味する。
軸先を取りつけたら、軸棒をカンナで削り、
そこに表具師の名を書き入れる。
これを掛け軸に巻き付けることで、
誰の作品なのかがわかるのだという。

最後に、掛け軸の上から垂れ下がる風帯を縫いつけて完成だ。

清水寺を描いた一服の掛け軸。
作品を引き立てる表装は、まさに唯一無二のできばえである。

江戸表具 × 賞状ケース

ニュークラフツ作りに挑む石井弘芳さん
完成した江戸表具の賞状ケース

賞状をいっそう引き立てる江戸表具のニュークラフツ

今回、ニュークラフツづくりに挑むのは、
石井三太夫表具店、15代目店主の石井さん。
360年以上の伝統から生みだされるニュークラフツとは……。

最近では、
我々も屏風を変形させたようなものをつくっているんです。
きっと面白いものができるはずですよ。
— 石井弘芳

どんな作品ができるのか期待が膨らむ。

この道55年のベテラン表具師、石井さん。
何やら裂地を細長く切っているようだが……。

ついに完成した、江戸表具のニュークラフツは、
江戸表具の賞状ケース。
金襴(きんらん)と金粉(きんぷん)が施された裂地を
全面にあしらった贅沢な逸品だ。
実はこの賞状ケースには、横にも縦にも開く、
粋な仕掛けが施され、
賞状をよりいっそう際立たせるようになっている。

これぞまさに、主役を引き立てる江戸表具のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.042 江戸表具の賞状ケース

ダイジェスト動画

放送第42回:粋な仕掛けがほどこされた江戸表具の賞状ケース

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