セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第43回 古きを訪ね新しきを知る九谷焼のアロマポット

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華麗な絵付けが特徴の九谷焼。その始まりは、17世紀に遡る。
現在でも「ジャパン・クタニ」として海外でも愛される九谷焼のニュークラフツは、「九谷焼のアロマポット」だ。

九谷焼の伝統

華麗な絵付けがほどこされた九谷焼
色絵陶磁器の最高峰として世界中から愛され続けている

前田利治により開かれた九谷窯

かの北大路魯山人に、「全く古九谷は恐ろしく藝術的だ、
男性的であり、豪快であり、雅も亦頗(すこぶ)る雅でありして
世界中の焼物の前に斷然優越を感ずるものである……」
と言わしめた九谷焼。
古九谷の歴史は、加賀の大聖寺藩初代藩主・前田利治が、
17世紀に肥前・有田の技法を取り入れ、
領内の九谷村に窯を開いたのがはじまりと考えられていた。
だが、1970年代に有田の窯跡から
古九谷を思わせる色絵の陶片が出土し、
有田でも九谷より早く同様の色絵磁器がつくられていたことが判明。
そのため今日ではこれら両方を便宜的に古九谷様式と呼んでいる。
しかし、古九谷はわずか50年ほどで消滅。
その理由は、いまだ謎に包まれたままだ。

その後、100年を経て、九谷焼は再興九谷として復活。
江戸中期から幕末にかけて次々と新たな窯が興り、
独自の作風を生みだすことになる。
明治時代には、欧米に盛んに輸出され、
「ジャパン・クタニ」の名で好評を博し、
現在でも色絵陶磁器の最高峰として世界中から愛され続けている。

九谷焼の技術

常に時代の先端をいくデザインを生み出している
ろくろによる成形
「とんぼ」で直径と深さを計る
石膏製の型から生地をはずし、乾燥させる
下絵付け
上絵付け
完成品

伝統に現代の息吹を吹き込む

石川県能美市にある
上出長右衛門(かみでちょうえもん)窯は明治12年創業。
伝統技法を受け継ぎながらも、
常に時代の先端をいくデザインを生み出している窯元だ。

伝統というものは昔のものを継承するだけでなく、
今の時代の流れや人間の考え方を
取り入れていかなくてはいけません。
いわゆる“伝統”にしがみついているだけでは、
九谷焼は発展していかないでしょう。
— 上出謙太郎

古くから分業制がとられてきた九谷焼。
最初の工程はろくろによる成形からはじまる。
陶石と陶土を調合した土をろくろの中心に据え、
空気を抜きながらなじませる。
汲出碗(くみだしわん)を例にそのつくり方を見てみよう。
まず、ひとつの椀に必要な量の土を引き上げ、
手でおおよその形をつくる。

僕の作業が上手くいかないと、
あとの作業もみんなダメになってしまいます。
ろくろが基本となるんです。
— 河田安弘

形を整えるのに使うヘラやコテは、職人自らつくるのだという。
たとえば、直径と深さを計るための「とんぼ」と呼ばれる道具は、
同じ大きさの器を複数つくるためのもの。
ひとつの汲出碗を形成するのに必要とする時間は、わずか1分半。
手作業にもかかわらず、均一につくりあげる。

熟練の技が光る絵付け

汲出碗の作業はここまで。次は、徳利の制作工程だ。
徳利をはじめとした複雑なデザインの製品を大量につくる際には、
「鋳込み」と呼ばれる成形法が使われる。
まず、複数の部品からなる石膏製の型に、
水分の多い鋳込み専用の土を流し込む。
すると土は、型と接している面から水分が吸収され、固まっていく。
3ミリほどの厚さになったところで、余分な土を取り出すと、
型の内側に付着して残った部分が生地になる。
そのままの状態で半日放置し、型からはずす。

さらに半日、生地を空気の流れの少ない
「室」と呼ばれる部屋に入れ、ゆっくり乾燥。
十分固くなったら口の部分や、高台をカンナで削り、形を整える。
人の手で丁寧に仕上げをしたら、約750度で素焼きする。

下絵付けの作業では、
あらかじめ下書きを施したものに、細い筆で線を描く。
焼くと藍色へと変化する呉須(ごす)という顔料を使い、
煮出したお茶で溶いて、濃さを調整。
湾曲した生地の表面に、熟練の手さばきで一気に線を描く。
線を描き終えたら、ダミと呼ばれる塗りの作業へ。
専用の太い筆で先ほど描いた線の間を塗りつぶす。
筆先の細かな動きがそのまま、
焼き上げた際に柔らかい濃淡として現われるのだという。
さらに濃さの異なる呉須を塗り込む。
焼く前は、発色の違いがわかりにくく、経験だけが頼りとなる。

続いての作業は施釉(せゆう)。
釉薬を施すことで、焼き上げた際、
表面が透明なガラス質に覆われ、ツヤが出るのだ。
釉薬が生地全体に均一にかかるよう、
余分な釉薬は水に浸して洗い流す。
生地が乾いたら、いよいよ2度目の焼成(しょうせい)。
「本窯」と呼ばれる焼物の出来を左右する大事な工程だ。
焼き上がりの具合を計算しながら、生地を積みあげていく。
窯入れをしたら、13時間かけて窯の温度を1250度まで上げ、
窯の熱が冷めた翌日に取り出す。

リンゴの皮を磨いたような、てかりが出るよう焼いています。
—大窪実

続いて上絵付けの作業。
赤呉須で細い小紋を描き、和絵の具で彩色する。
絵の具を均一の厚さにするためには、高度な技術が必要。
絵付けが終わり、
再び800度から1000度の高温で焼きあげたら完成だ。
柔らかい染付のグラデーションと
繊細な赤い小紋がアクセントになったみごとな徳利だ。

九谷焼 × アロマポット

完成したデザイン画をもとに相談する
完成した九谷焼のアロマポット
上皿には色鮮やかな山茶花の花

古の道具を現代に甦らせた九谷焼のニュークラフツ

今回、ニュークラフツづくりに挑むのは、
上出長右衛門窯の若きリーダー、上出惠悟さん。
クリエイティブディレクターとして商品開発に携わる一方で、
新しい焼物の可能性を追求したアート作品も手がけている。
完成したデザイン画をもとに、ロクロ成形の河田さんと相談する。

デザインをするときは、制作工程の複雑さや大変さというものは、
あまり考慮しないんです。
挑戦をしないと九谷焼の技術は向上しないんです。
— 上出惠悟

彼のデザインは、こちらの想像を超えたものばかり。
それに応えるのは大変ですが、今回も頑張ります。
— 河田安弘

まず、道具からつくりはじめた河田さん。
長さの異なる「とんぼ」を用意した。続いてろくろ成形。
一体何ができあがるのだろうか? 

オーダーした九谷焼のニュークラフツがついに完成した。
それは、アロマポット。
本体部分には、日本の伝統的な模様である木瓜紋(もっこうもん)
が透かし彫りされている。
上皿には、九谷の五彩を大胆に使った色鮮やかな山茶花の花が。
実はこのアロマポットには、ある狙いが……。

近年、あまり使われていないもののひとつに、
客に杯を振る舞う際に使われる盃台があります。
それをヒントに、アロマポットを考案しました。
— 上出惠悟

好みのアロマオイルを数滴垂らせば、部屋いっぱいに香りが広がり、
心身ともにリラックスできることまちがいなし。
これぞまさに九谷焼のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.043 九谷焼のアロマポット

ダイジェスト動画

放送第43回:古きを訪ね新しきを知る九谷焼のアロマポット

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