セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第44回 和の心地良さを伝える組み合わせ畳

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生活様式の多様化にともない、当たり前の存在ではなくなりつつあるものの、
日本人にとって畳はやはりどこか懐かしく、そして心休まるアイテムである。
伝統工芸にして、実用品である畳のニュークラフツは、モダンな空間にもマッチする「組み合わせ畳」だ。

畳の伝統

日本建築には欠かせない「畳」
畳を敷きつめた「座敷」

時代とともに変化した畳の用途

日本建築には欠かせない「畳」。
その歴史は古く、1300年前に遡る。

奈良時代、木製の台に敷いて寝具として使われていた畳は、
平安時代になると厚みを増し、階級を表す道具になった。
たとえば、小倉百人一首の身分の最も高い天皇の取り札には
繧繝縁(うんげんべり)、大臣には高麗縁(こうらいべり)などが
描かれており、身分により畳縁が決められていたことがわかる。

また、鎌倉時代の絵巻に描かれた
急な来客に慌てて畳を運ぶ様子からもわかるように、
当時の畳は部屋全体に敷きつめて使うものではなく、
必要に応じて板の間に敷いて使うもの。
現在の座布団のような役割を担っていたのだ。

そんな用途が変わるのは、室町時代。
書院造りの発達がきっかけだった。
畳を敷きつめた部屋はやがて「座敷」と呼ばれるようになり
茶室が発展すると、畳は日本の建物に欠かせないものとなった。

江戸城の築城にともない諸大名の屋敷や町家が
次々と建てられた江戸時代には、どの家にも座敷が設けられ、
畳はより身近なものに。
日本で生まれた畳は今や、海外でも人気を集めている。

畳の技術

原料となるイグサを収穫する
粘土質の土を溶かした泥にイグサを浸す「泥染め」
イグサを一本ずつ確認する
畳表(たたみおもて)を織る
縁(へり)を付ける
角(すみ)を縫い合わせる
完成品

良質の原料を生む丹念な手仕事

畳づくりを知るために最初に訪れたのは、
原料となるイグサの一大産地、熊本県八代(やつしろ)市。
国産イグサの9割が、同地で生産されている。

上質の原料とされる、熊本県産のブランド「ひのみどり」を栽培する
吉住忍(よしずみ・しのぶ)さんは言う。

畳の出来は、8割がた原料で決まります。
ひのみどりの特徴は粒が細くて、見た目が良く、
厚みがあるので加工しやすいこと。
その一方で、高温や風に弱く、栽培するのが大変なんです。
— 吉住忍

手塩にかけて育てたイグサの収穫時期は、
6月下旬から7月中旬にかけて。
収穫後はイグサに水をかけて、内側にこもった熱を冷ます。

イグサの加工は「泥染め」と呼ばれる作業から。
専用のプールに粘土質の土を溶かした泥を流し込みイグサを浸す。
光沢と独特の香りを引き出すためだ。
この泥染めの工程こそが、「新しい畳は雑巾で拭け」と
いわれてきた所以である。

イグサに泥がじゅうぶんに染みたら乾燥機に。
収穫期には、明け方まで作業が続く重労働だ。
機械で余分な泥を振り落したイグサを束ね、
変色を防ぐための黒い袋に入れ、あら熱がとれたら、
泥がイグサと馴染むまで保管する。

続く作業は、品質チェック。イグサを一本ずつ確認する。

枯れたイグサが混ざってしまうと、ゴザの強度も弱くなり、
見栄えも悪くなるので、丁寧にチェックします。
— 吉住幸美

折れたイグサを取り除き、
規定のサイズにカットしたら、機械にセット。
そして、ようやく畳表(たたみおもて)を織る作業である。
経糸(たていと)は綿と麻の2種類。
こうすることで、耐久性に優れた畳表に仕上がるのだ。

知られざる伝統の技

イグサの産地に続いて訪れたのは、東京都品川区。
かつて東海道の宿場町として栄えたこの地に
江戸時代より255年続く加藤畳店だ。
同店十四代目の畳職人、加藤丈幸(かとう・たけゆき)さんに、
その技を見せていただいた。

畳は主に、「床(とこ)」と「表(おもて)」、「縁(へり)」
で構成される。まずは畳の土台となる床から。

1年ほど乾燥させたワラを何層にも重ねて圧縮し、
専用の包丁で一畳分の大きさにカット。

つくる工程よりも、寸法をとるほうが難しいんです。
部屋のサイズに合わせて、綺麗に並ぶように畳の寸法をとること。
その計算がポイントです。
— 加藤丈幸

表面に水をかけて泥を落とし、表の余分な箇所を切り落としたら、
畳に趣を添える縁を付ける。
加藤さんが選んだのは、綿でできたシンプルなもの。

縁の補強にもなる下紙(したがみ)と縁を折り返したら、
角(すみ)を縫い合わせる。

角は畳の胆。人間の顔でいえば鼻ですね。曲がっていたりすると、
敷き詰めたときに、格好が悪いんです。
父からもそう教えられました。
— 加藤丈幸

床(ゆか)と畳床(たたみどこ)の隙間を調節するため、
底にワラを縫いつける。
こうすることで、畳の厚みがそろい、平らに敷けるのだとか。

座敷の入り口で段差ができないようにすること。
それが畳屋の腕のみせどころですね。
— 加藤丈幸

一見、ただ縫っているようだが、実は針孔が目立たないように、
畳の谷と呼ばれる部分を選んで針を出しているのだ。

鉤(かぎ)と呼ばれる道具を使い、
先ほど縫い付けた糸を裏から手繰り、
表がたるまないように締めたら、いよいよ仕上げ。
作業中にできた針の孔に霧吹きで水をかけ孔をふさぐ。
水分を吸うと膨張するイグサの性質を利用した、
これもまた先人の知恵のひとつだろう。

目のそろった端正な畳。その美しさは、
伝統の技が受け継がれ、守られてきたことの証である。

畳 × 組み合わせ畳

縁を選ぶ加藤丈幸さん
完成した組み合わせ畳

畳の良さをダイレクトに味わえるニュークラフツ

畳のニュークラフツづくりに挑むのは、
加藤丈幸さん。

サイズの小さなものなので、縁の幅をどうするか、
どうすれば見た目も良いものができるか……。
いろいろと悩んでいます。
— 加藤丈幸

仕上げとなる縁に関しても、柄ものにするか、無地にするか、
頭を悩ませている様子。
いったい、どんなニュークラフツができるのか。

完成したのは、「組み合わせ畳」だ。

一辺が30cmと小さく、厚さは床に置いても違和感のない3cm。
4つ組み合わせれば、座布団に。
12個組み合わせれば、くつろぎのスペースへと早変わり。
持ち運びもできて、
重ねて積み上げれば収納も場所をとらない優れものだ。

モダンな空間にあっても、敷くだけで和室の気分を味わえる、
これぞまさに畳のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.044 畳の組み合わせ畳

ダイジェスト動画

放送第44回:和の心地良さを伝える組み合わせ畳

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