セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第45回 和の趣を感じさせるつまみ簪のクリスマスツリー

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四角に小さく切った薄い絹の布をつまみ、組み合わせることで花などの文様をつくる「つまみ簪(かんざし)」。
和装の女性を華やかに彩る東京の伝統工芸品である。
江戸から続く伝統の技を活かしたニュークラフツは、和洋折衷の「クリスマスツリー」だ。

つまみ簪の伝統

東京の伝統工芸品「つまみ簪(かんざし)」
布(きれ)をつまんでつくる
七五三に欠かせない華やかな「つまみ簪」

今も昔も女性を華やかに彩る伝統美

江戸時代より受け継がれる、
東京の伝統工芸品「つまみ簪(かんざし)」の、
見る者を魅了する華やかさはもちろん、
「簪」そのものの歴史もまた実に興味深い。

その名の由来は諸説ある。

一つは、縄文時代に魔よけとして用いられていた
髪を束ねる細い棒状の「髪刺し(かみざし)」が
「かんざし」に変化したという説。
あるいは、平安時代に宮中の男性が儀式のときに、
頭に挿した花「挿頭花(かざし)」が転じて
「かんざし」になったという説もある。

女性の髪型のヴァリエーションが増えた江戸時代には、
べっ甲やガラス玉などさまざまな素材を使った
簪文化が花開き、その後期になると、
京都の舞妓さんの間で花簪(はなかんざし)が流行した。
一説によれば、これが江戸に伝わり、
「つまみ簪」へと発展したとされている。

読んで字のごとく、布(きれ)をつまんでつくることから
「つまみ簪」と呼ばれるようになったのだ。

しかし、明治時代になると、女性の装いの変化に合わせて、
髪型も和風から洋風へ。次第に簪文化は衰退していった。
第二次世界大戦中には、
簪は贅沢品とみなされ製造禁止になったこともある。

そんな不遇の時代を経た「つまみ簪」に
再び光を当てたのが七五三だ。
戦後の高度成長期には、華やかな「つまみ簪」は、
七五三に欠かせない飾りとして、再び人気を博したのである。

つまみ簪の技術

この道35年のつまみ簪職人、石田毅司さん
染色した生地に針のついた竹ひごを挿す「伸子張り」
裁断した羽二重をピンセットでつまんで折りたたむ
つまみを和紙の台紙に貼る
仕上げに金具とワンポイントの飾りをつける
丸つまみの梅の花びら
完成品

丸つまみの梅の花びら

そんな「つまみ簪」の伝統の技に触れるべく訪れたのは、
東京都・高田馬場にあるマンションの一室。
この道35年のつまみ簪職人、石田毅司さんの工房だ。

石田さんは、祖父の代から続く職人一家の三代目。
弟の貴志さんとともに、江戸より続く伝統の技を
今に受け継ぐ職人だ。

今回見せていただいたのは、七五三向けの「くす玉」と、
舞妓さんや若い女性向けの「松竹梅と菊」の製作工程である。

まずは「くす玉」から。
実にカラフルだが、使用する素材は
羽二重(はぶたえ)と呼ばれる白い絹のみ。

まずは生地を染色し、一晩干して染料がなじんだところで、
皺をのばして乾かすために針のついた竹ひごを挿す
「伸子張り(しんしばり)」。
ピンとのびた長さ8mの羽二重に、
水で薄めたでんぷんのりを刷毛で塗る。

続いては裁断。羽二重を切るのは、弟の貴司さん。
先代から受け継いだという30年ものの丸包丁を手に、
ぶれることなくまっすぐに切りわけていく。これも熟練の技。
正方形に切りわけた羽二重を、大きさごとに整理して準備完了。

色とりどりの羽二重をピンセットでつまんで折りたたみ、
でんぷんのりを均等にのばした木の板に並べる。
これが「つまみ」と呼ばれるもの。
製作中のくす玉には、実に200枚ものつまみが必要なのだが、
石田さんはそれらをなんと1時間足らずで用意してしまう。
「作業がはじまると無心になり、自然と手が動く」
(石田毅司さん)のだという。

職人は道具にも強いこだわりをもつ。

ピンセットは先がまっすぐで滑らかな細いほうがいいんです。
先端に滑り止めが付いていると、
薄い絹の布が破れてしまうことがありますから。
— 石田毅司

未来に伝える職人の魂

「つまみ」の形は、先のとがった「角つまみ」と、
曲線を活かした「丸つまみ」の2種類だけ。
職人はそれらを組み合わせることで、多彩な装飾を生み出すのだ。

続いては、このつまみを和紙の台紙に貼る。
屋根に瓦をふく仕草に似ていることから「つまみをふく」と
呼ばれるこの作業には、乾いてもすき間が出ないよう、
細心の注意が払われる。

200枚のつまみがすき間なく付いたところで、
くす玉の飾りが完成。

ここからは、いよいよ仕上げ。

絹でできた極天糸(ごくてんいと)を巻き、
髪の毛に挿すための金具をつけ、かんざしが美しく見えるように、
角度を入念に調整。最後に、ワンポイントの飾りをつけたら、
美しい「くす玉」の完成だ。

くす玉の原型は江戸時代から伝わるもの。
そこに新たに自分なりの工夫を加えていきます。
— 石田毅司

続いては、「松竹梅と菊」。
大輪の菊のまわりを松竹梅が囲む縁起のよいデザインだ。

大小10枚の丸つまみを駆使して八重咲きの梅の花びらを表現。
そして松には角つまみ、竹を表す笹の葉には丸つまみが使われる。

大事なのは手間を惜しまないこと。
よいものが残れば、後世の人の参考にもなるでしょうし、
それがさらに未来につながっていくのだと思います。
— 石田毅司

手間を惜しまない職人の技が、小さな絹の布を花びらに変え、
女性を美しく彩るつまみ簪を生むのである。

つまみ簪 × 組み合わせ畳

ニュークラフツづくりに挑戦する石田毅司さん
完成したクリスマスツリー

職人も納得のニュークラフツ

ニュークラフツづくりに挑戦するのは、
つまみ簪職人の石田毅司さん。

「意外なオーダーに、いつもとは勝手がちがう」と
戸惑いながらも、黙々と作業を続ける石田さん。
用意した緑色の角つまみを茶色の細い棒につけている……。
いったいどんなアイテムができるのだろうか。

ベテランの職人が工夫に工夫を重ねて完成させたのは、
つまみの技を活かした「クリスマスツリー」。

緑色の角つまみで、可愛らしいもみの木を表現した。

オーナメントは実はくす玉。
120枚もの極小の羽二重を使用した力作だ。
さらに夜には、小さなツリーにライトが灯り、
イルミネーションも楽しめる。

つまみでつくったツリーは、どこか和の趣が表現されていて、
自画自賛ではありますが、いいできばえではないかと。
— 石田毅司さん

世界でひとつだけの和洋折衷のクリスマスツリー。
これぞ「つまみ簪」のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.045 つまみ簪のクリスマスツリー

ダイジェスト動画

放送第45回:和の趣を感じさせるつまみ簪のクリスマスツリー

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