セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第46回 ときとともに味わいが増す鎌倉彫のハンガー

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800年のときを超え今に受け継がれし、古都・鎌倉が誇る伝統工芸「鎌倉彫」。
豪快かつ繊細な彫り、そして陰影を生み出す塗りの技を活かした、身近なインテリア・アイテム「鎌倉彫のハンガー」が誕生した。
これぞ“ニュークラフツ”というべき逸品である。

鎌倉彫の伝統

鎌倉の地におよそ800年にもわたり受け継がれてきた伝統工芸
木彫りに漆を塗る新たな技巧で仏具をつくった
時代にあわせて進化する鎌倉彫

古都に受け継がれし伝統の技

鎌倉の地におよそ800年にもわたり
受け継がれてきた伝統工芸がある。それが「鎌倉彫」だ。
そこには受難の歴史を乗り越え、
技を受け継ぐ職人の想いが込められている。

源頼朝が幕府を開いた鎌倉では、寺社の建立のために集められた
仏師や宮大工によって、彫刻技術は発展。
ちょうどそのころ、禅宗とともに中国から伝えられた
彫漆器の精巧さに魅せられた仏師たちは、独自の工夫を凝らし、
木彫りに漆を塗る新たな技法で仏具をつくるように。
これが、鎌倉彫のはじまりとされている。

鎌倉の建長寺には当時の様子を今に伝える
貴重な作品が残されている。そのひとつである
「獅子牡丹文須弥壇(ししぼたんもんしゅみだん)」は、
木に彫刻を施し、そこに漆を塗るという技法が用いられた作品だ。

また、室町時代につくられた椿文(つばきもん)の作品
(室町時代から現代までの作品をそろえる鎌倉彫資料館に展示)
を見れば、次第にデザインも日本独自のものへと
変化したことがわかるだろう。
そして江戸時代になると鎌倉彫は仏具にとどまらず、
生活用品にまで広がりを見せ、さらなる発展をしていった。

しかし、明治時代に新政府によって公布された
神仏分離令(しんぶつぶんりれい)によって廃仏毀釈が起こると、
仏師の仕事は激減。多くの仏師が路頭に迷うなか、
立ち上がったのが、鎌倉時代から続く仏師の一族、
後藤齋宮(ごとう・いつき)と三橋鎌山(みつはし・けんざん)だ。

文様をふっくらと浮き上がらせる「後藤彫」と、
深彫りが特徴の「三橋彫」を生み出し、
工芸品としての鎌倉彫を確立。専門の職人が次々と誕生した。

こうして技の継承に成功した鎌倉彫は、
その後も時代にあわせて進化し、今なお人気を集めている。

鎌倉彫の技術

下絵を転写する
小刀を手に、切り込みを入れていく
「たち込み」の角度によって、鎌倉彫独自の立体を表現する
お盆の裏に刷毛目(はけめ)をつける
「上塗り」をし、再び室に入れて乾かす
ワラのたわしに砥の粉をつけて研ぐ「研ぎ出し」
完成品

作品に奥行きをもたらす“彫り”と“塗り”

歴史ある技を知るべく訪れたのは神奈川県鎌倉市、
鶴岡八幡宮の脇に店を構える「博古堂(はっこどう)」。
鎌倉仏師の流れを汲む後藤家が明治33年に開いた鎌倉彫の老舗だ。
二十九代目当主である後藤圭子さんが、デザインを担当する。

今回見せていただいたのは、お盆の製作工程だ。

まずは「下絵」。

青竹(あおたけ)と呼ばれる染料を水に溶いたもので、
図案の裏からなぞる。
なぞった面を下に、図案の上からこすって転写。
絵柄は仏像を乗せた台座の蓮の花をモチーフにした
代表的なデザインだ。

彫りを担当するのは、永田秀隆さん。
小刀を手に、切り込みを入れていく。
この「たち込み」の角度によって、
鎌倉彫独自の立体感を表現するのだ。

刃先が丸い丸刀(がんとう)に持ち替え「荒彫り」の次は
「刀痕(とうこん)」の作業。

ノミ跡をつけることによって、最初の丸ノミの跡が消えたり、
かすれたり、思わぬ効果が出てきます。
さらに、漆を塗ったときの色の濃淡、
深みを表現することもできるんです。
— 永田秀隆

ここからは「塗り」。服部守さんが担当する。

30以上あるという鎌倉彫の漆塗りの工程は、
生漆(きうるし)を使った「木固め」から。
漆が乾いたら、「錆付け(さびつけ)」。
この工程は、お盆の裏だけ。
木目など無数の凹凸を、錆で埋めて平らにする。
一方、表面は「蒔き地(まきじ)」によって
微妙な凹凸をならしていく。

彫刻面のへこみや木の荒れを錆で埋めて木肌を整えたら、
お盆の裏に刷毛目(はけめ)をつける作業だ。
刷毛目をくっきりと描くために、
漆に卵白を混ぜ、少し粘りのあるものを使う。

お盆の裏に施された刷毛目を見れば、
その文様で、どの工房でつくられたのかがわかるのだという。

さらなるひと手間が生む艶

生漆に鉄粉を加えた黒中漆(くろなかうるし)を塗る、下地の補強と、
肌づくりを兼ねた「中塗り」を終えたら、「上塗り」。
昔ながらの人毛の刷毛が使われる。

漆を何層にも重ねる鎌倉彫は、
木彫彩漆(もくちょうさいしつ)ならではの難しさがある。

漆は厚く塗ると収縮してしまうんです。
たとえば彫りの谷の部分などは、縮れてしまったり……
— 服部守

再び室に入れて乾かしたら、
鎌倉彫独特の古色を表現する「マコモ蒔き」。作業は終盤へ。

一晩かけて再び乾かしたら「研ぎ出し」。
ワラのたわしに砥の粉をつけて研ぐと、
彫りの高い部分にたわしがあたるため、
模様に陰影が現れ、彫に深みが出るのだ。

ここからが最後の仕上げ。「摺漆(すりうるし)」である。
使われるのは、生正味(きじょみ)と呼ばれる国産の上質な生漆。

研ぎ出しによって荒れた肌に塗ることによって、
漆の吸収がさらに良くなるのだ。
これだけでも十分に艶が出るのだが、ここからさらにひと手間。
煤の粉末、すす玉を蒔き、彫りの隙間にたまった漆を拭き取る。
摺漆は塗ることよりも、拭き切ることのほうが大変なのだという。

下絵からおよそひと月。ようやくお盆が完成した。
彫刻面に漆を塗り重ねることで生まれる艶と滑らかな肌が実にみごと。

使うことで艶が増したり、表面が削れて下の黒い部分が出て
より風合いが豊かになるなど、
経年変化が楽しめるのも魅力のひとつでしょう。
— 服部守

鎌倉彫 × ハンガー

ニュークラフツをデザインする
完成した鎌倉彫のハンガー

おしゃれで職人技光るニュークラフツ

今回、ニュークラフツづくりに挑むのは、
後藤家二十九代目当主、後藤圭子さん。
そのアイテムとは、どの家庭にもある“あれ”だという。

「丸みのある形状に、曲線的な唐草模様を施し、
さらに深彫りでボリューム感を出したい」と語る後藤さん。
いったい何をデザインしたのだろう。

下絵が完成したら、彫りの作業。
切れ味鋭い小刀で唐草模様を彫るのは、森重謙さん。
「素材が持ちづらくて安定しないんです」と、
従来にはない形状の作品に、やや苦労したようだ。

完成したのは、「鎌倉彫のハンガー」。
おしゃれに気をつかう人でも、おろそかにしがちなアイテムである。

ていねいに彫られた唐草模様は陰影が美しく、サイドの彫刻は
服がずり落ちないように滑り止めの役割を担っている。

日常的に使用いただけるものなので、漆ならではの
経年変化が楽しめますし、彫りの美しさが空間に彩りを
添えてくれる、とても面白い作品だと思います。
— 後藤圭子

高級感漂う暮らしのアイテム。
これぞまさに鎌倉彫のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.046 鎌倉彫のハンガー

ダイジェスト動画

放送第46回:ときとともに味わいが増す鎌倉彫のハンガー

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