セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第47回 新春を言祝ぐ金箔の付箋

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古今東西、その華やかな輝きと希少性で、永遠普遍の価値をもち続ける「金」。
この高価な金属を、極限にまで薄く伸ばした「金箔」は、日本の伝統文化を彩ってきた。
古より受け継がれし伝統工芸「金沢箔」のニュークラフツは、祝いの言葉に華やぎを添える金箔の「付箋」だ。

金箔の伝統

仏の崇高さや、極楽浄土の華やかさの演出には不可欠な金箔
工芸品や建築物などに使われてきた
金箔があしらわれた工芸品

日本文化と深く結びつく金箔

金は古来、日本の文化を特徴づける色のひとつである。
とくに仏教との関係は深く、仏の崇高さや、
極楽浄土の華やかさの演出には不可欠なものであり、
それを可能にしたのが「金箔」だ。
金箔は工芸品から建築物に使われるなど、
日本の文化を彩り続けてきたのである。

北陸、石川県の中央に位置する金沢市。
金沢の「金」の字は、実は金に由来する。

今から1200年前のこと。

現在の兼六園の隅にある沢で、男が芋を洗ったところ、
土に砂金が含まれていた、という。
町を流れる犀川(さいがわ)の上流には、
今でもまれに砂金が見つかることがあるとか。
そんな金沢で金箔がつくられはじめたのは、
遅くとも戦国時代末期とされ、城の内外には、
何万枚もの金箔が貼られ、その一部が、今も残されている。

しかし江戸時代、金沢の金箔文化に危機が訪れた。
幕府は経済体制を固める政策として厳しい統制を図り、
江戸と京都以外での金箔の製造を禁じたのだ。
そんななか、金沢では、錫や真鍮での箔製造を行いつつ、
裏では金箔の「隠し打ち」をし、
職人たちは密かに腕を磨き続けたのである。
やがて、幕末に金箔製造が解禁になると、
金沢の職人は卓越した技術力で他を圧倒。
全国シェアを独占していく。
また、石川県は九谷焼や加賀象嵌、加賀水引など、
伝統工芸が盛んな土地でもある。
それらの工芸品に金をあしらい、その名を全国に響かせた。
金沢は今も、日本の“黄金文化”を一手に支えているのである。

金箔の技術

金にわずかな銀と銅をまぜて、合金をつくる
20分の1ミリの薄さに、機械で延ばす
特殊加工した和紙に、1枚1枚上澄を挟む「仕入(しきい)れ」
5センチ四方に切り取る
完成した金箔
独自に配合した液に、紙を漬ける
紙を重ねて機械で打つ

極限の薄さに宿る職人の技

金箔は分業制でつくられる。
そのうち、金を1万分の1ミリの薄さの箔に
仕上げる作業を担うのが「箔屋(はくや)」。
この箔屋を営む松村さん一家のように、
昔ながらの方法で製造するのは、現在20軒あまりだという。

そんな村松さんに金を1万分の1ミリの薄さにする
職人技を見せていただいた。
作業工程は、大別して2段階
--地金を1千分の1ミリの薄さに伸ばす「澄(ずみ)」と、
さらにそれを1万分の1ミリの薄さに仕上げる「箔(はく)」--
に分けられ、それぞれ異なる職人が担当する。

「澄屋(ずみや)」の作業は、
金にわずかな銀と銅をまぜる合金づくりから。
次に、これを機械で延ばす。
何度も繰り返し、20分の1ミリの薄さに。

続いては、金を叩いて延ばす「澄打(ずみう)ち」の作業。

厚さ1千分の1ミリ、大きさ20センチ角の、
「上澄(うわずみ)」と呼ばれる金に仕上げるまでが、澄屋の仕事。

「上澄」は、箔屋の松村さんのもとへ。

まずは、上澄を小さく切ったものを「箔打紙(はくうちがみ)」と
呼ばれる特殊加工した和紙に、1枚1枚挟む「仕入(しきい)れ」。
その数1800枚。丸1日を要する作業である。
次に、この束を機械で叩く。15分ほど叩き、
紙と金が熱くなったら、一旦冷ます。これが重要な作業となる。

紙は熱さで延び、金箔も延びる。紙は冷めると戻りますが、
金箔は戻りません。その作用を利用します。
— 松村謙一

打っては冷まし、打っては冷ましを幾度も繰り返す。

厚さが1万分の1ミリになったところで、
「広物帳(ひろものちょう)」という冊子に移す。
「抜き仕事」と呼ばれるこの作業は、1800枚の金箔を移すのに、
なんと2日もかかるという。
ここまで薄くなると、もう素手では扱えない。
あまりに薄いため、指で触ると手の脂や静電気で、
絡みついてしまうからだ。

いよいよ仕上げの「うつし仕事」。
金箔の1枚1枚を、5センチ四方に切り取るこの作業も
2日を要する。

経験に裏打ちされた繊細な作業の結晶

多様な工程を経る金箔づくりにおいて、
最も難しく重要な作業が金箔を挟んで打つための紙
--「箔打紙」づくりである。
この紙の質が金箔の品質を左右するのだ。

紙がダメだと、まず箔が延びず、薄くはなりません。
なかなか1万分の1ミリにまでならないんです。
— 松村謙一

箔打紙の原料は、繊維が細く丈夫な雁皮(がんぴ)の木の皮。
この木の皮に、土を混ぜて漉き込んだのが「下地紙(したぢがみ)」だ。
これをさらに箔屋が自ら加工する「紙仕込み」は、
実に手間暇がかかる作業である。
用意するのは、藁の灰でつくった灰汁汁に、卵と柿渋。
これらの材料を職人が独自のレシピで配合し、
紙を強く、なめらかにする液をつくるのだ。
この液に紙を漬ける際は、紙同士がくっつくのを防ぐため、
1枚1枚はがしながら慎重に行う。
2時間かけて1800枚を漬けたら、一晩置いて、馴染ませる。

そして、翌朝。
紙から水を抜き、ゴザの上に数枚ずつ並べ、湿気をとる。
今度は1800枚すべてを、1枚ずつはがしていく。
さらにゴザで湿気をとりのぞき、タイミングを計りながら裏返す。
微妙な乾燥具合の判断が、紙の仕上がりを左右する。

続いて、紙を重ねて機械で打つ作業。
これもまた紙の乾燥具合などによって微妙な調整を要する。
紙を打つ強さだけではなく、そのテンポやタイミングも
紙の状態に合わせて変えなければならない。

打ち終わったら、再び1枚ずつはがして、湿気を少しずつ飛ばし、
再び打つ。これを5回から10回繰り返す。

長年培われてきた技と勘、そして、途方もない繰り返しの作業。
金箔の美しい輝きは、その賜物なのだ。

金箔 × 付箋

経木に金箔を貼る
完成した金箔の付箋

華やかな席にこそふさわしい金箔のニュークラフツ

今回、ニュークラフツづくりに挑むのは、
金箔を使った多彩な製品を扱う「さくだ」。大正8年創業の老舗だ。
近年では、オリジナル商品を企画、製作、販売をしている。
作品づくりを担当する寺本健一さんは、この道25年のベテランだ。

素材との兼ね合いや、全体のバランスを考慮しつつ、金箔らしさ、
イコール高級感とか豪華さをうまく表現したいですね。
— 寺本健一

さっそく、作業をはじめた寺本さんが取り出したのは、
木を紙のように薄く削った「経木(きょうぎ)」だ。
これにテープでマスキングをし、素材に適した接着剤を塗り、
その上から金箔を貼る。最後に、テープをはがすと……。

完成した金箔のニュークラフツは、4種類の付箋。
紙ではなく、経木に金箔をふんだんにあしらった、
高級感あふれる付箋である。

年賀の挨拶や、パーティーの招待状にメッセージを添えたり、
特別な人を祝福したりするときなどにふさわしい逸品。
これぞ金箔のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.047 金箔の付箋

ダイジェスト動画


放送第47回:新春を言祝ぐ金箔の付箋

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