セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第48回 美しき模様で愉しむサンドブラストガラスのピック

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まばゆく光るガラスに滑らかな色のグラデーションが見る者を魅了する「サンドブラストガラス」。
砂を加工して描かれる繊細な模様は、まるでガラスの上で踊るかのよう。
誕生は今から42年前。サンドブラストガラスと呼ばれる技法を使った、ガラス工芸を生み出したのは、あるひとりの日本人だった。

サンドブラストガラスの伝統

デザインが施されたガラスの食器
「色被(き)せガラス」を取り入れた
何層もの色被せガラスを使った、サンドブラストガラス工芸

閃きから生まれたガラス工芸

サンドブラストとは、圧力で砂を噴出するサンドブラスター
という機械を使い、鉄や墓石を削る加工技術のこと。
アメリカの発明家・ベンジャミン・ティルマンの
ある閃きにより生まれた。

強い風が吹き荒れていたある日。
ふと、小屋の窓ガラスに目をやった彼は、
風に巻き上げられた砂によって窓ガラスが削れ、
模様ができていることに気づいた。
そこで彼はこれを人工的につくれたら面白いと研究を重ね、
1870年ごろ、サンドブラスターを開発し、
サンドブラスト技術を確立した。

主に船のサビ落しなど、工業技術として普及していた
サンドブラスト。そこに目を付けたのが、
ガラス会社に勤めていた竹内洪(こう)さん。
彼は、新たなガラス製品ができないかと日々模索していた。
当初はサンドブラストを使い、
ガラスの食器にデザインを施していたが、
さらに面白いものがつくれないかと考えた。

そこで、取り入れたのが「色被(き)せガラス」。
会社を辞め、単身ヨーロッパに渡り、
色ガラスを重ねる技術を学んだ。
さらに、サンドブラストガラスで
色が奇麗に表現できる組み合わせも研究。

そして試行錯誤の末、世界ではじめて何層もの色被せガラスを
つくり上げ、サンドブラストガラス工芸を完成させた。

サンドブラストガラスは手軽にはじめられる趣味の工芸として、
人気を集め、さらにその魅力は日本にとどまらず、
世界にも広がっている。

サンドブラストガラスの技術

サンドブラストガラスの生みの親、竹内洪さん
絵柄を直接書き込む
削りたい部分のマスキングテープを剥がす
サンドブラスターでガラスを削る
奥行きを深め、立体感を表現する「多段彫り」
完成品

色被せガラスを使う繊細な技術

大阪のベッドタウン、茨木市の山道にある「竹内グラススタジオ」。

サンドブラストガラスの生みの親、竹内洪さんの工房だ。
今回は、竹内さん直々にサンドブラストガラスの
制作工程を見せていただいた。

作業は、「スケッチ」からはじまる。

基本となるものがあるからこそデザインができる。
原物に勝るものはありません。それが、スケッチをする理由です。
— 竹内洪

今回使うのは、コバルトブルーの色被せガラス。
透明なガラスに色ガラスを巻いて重ねた色被せガラスは、
重ねるガラスの色にまでこだわりがある。

まずはマスキングテープを貼る作業。
一般的なガラス工芸用のマスキングテープを使用する。
実はこのマスキングテープの開発には、
竹内さんも関わっているという。サンドブラストの技法だけでなく、
ガラス工芸の発展にも貢献しているのだ。

貼り終えたら、絵柄を直接書き込む。
今回のモチーフは、野山に咲くアヤメ。
ガラスづくりからはじまり、工程はすべて、
竹内さんひとりの手によって行われる。

描き終えたら、デザイン用のカッターナイフで切り出す。
深く切りすぎるとガラスを傷つけてしまうため、
加減をしながら慎重に、刃先でなでるように切るのがコツだ。
切り出しで失敗すると、一からやり直しになるため、気が抜けない。

すべて切り出し、削りたい部分のマスキングテープを剥がせば、
カットは終了。

砂とガラスをあわせた美の魅力

ここで、いよいよサンドブラスターの登場だ。

砂は上部のタンクに溜められ、
そこから伸びる管がノズルガンへとつながる。
ペダルを踏むことでコンプレッサーが稼働し、
ノズルから砂が噴射される仕組みだ。
削りたい範囲や作品により、
穴の大きさが異なるノズルを使い分ける。

圧力が高いと砂の勢いが強く、ガラスを大量に削る場合は、
圧力を高めて砂の勢いを強くする。
一方、削る範囲や深さを微調整するときは圧力を弱める。
この作業の肝となるのはグラスとノズルガンの距離。
竹内さんは全身全霊を注ぎ、ガラスを削る。

続いて圧力を下げ、グラスの縁だけを残し、全体を削る。
砂が当たる部分の見極めが必要とされる、重要な作業だ。

一段削り終えたら、次に削る部分のマスキングテープを、
ガラスを傷つけぬよう慎重に剥がす。
剥がした部分を再び削ることにより、
一枚のガラスのなかにいくつもの段ができる「多段彫り」は
段が増えるほど、奥行きが深くなり立体感を表現できる。

サンドブラスターで削っては、マスキングテープをめくる。
これをおよそ25回繰り返すという地道な作業が続く。

いよいよ、紙ヤスリで仕上げの工程。
凹凸のある部分を削り、艶を出したら完成。
アヤメの美しさを、繊細なタッチでみごとに表現した。
さらに、緑のグラデーションがアヤメを引き立て、
段をつけることで絵柄に奥行きが生まれている。

サンドブラストの魅力は、
自分の表現したいことが如実にできることです。
— 竹内洪

サンドブラストガラス × ピック

ニュークラフツ作りに挑む竹内洪さん
完成したサンドブラストガラスのピック

使って楽しいサンドブラストガラスのニュークラフツ

今回のオーダーに挑むのは、
サンドブラストガラス作家の竹内洪さん。

さっそく、試作品をつくることに。

頭を悩ませながらも、
まずできあがったのは、先が尖った棒のようなもの。
これに何やら加工をしているようだ。

いったいどんなアイテムができあがるのだろうか。

完成させたのは、「サンドブラストガラスのピック」。
計算された形は、テーブルに置いても転がらないよう、
工夫が施されている。
そして持ち手には、サンドブラストガラスの真骨頂、
細いガラスに何とも美しい幾何学模様が。
ここに竹内さんの遊び心が隠されていた。

ピックをくるくるとまわすことで
模様が動いているように見えるようにしました。
動かしてもらって、愉しんでいただきたいですね。
― 竹内洪

これで果物を食べれば、普段とは一味ちがうはず。
来客用にもピッタリ。
これぞまさに、「サンドブラストガラス」のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.048 サンドブラストガラスのピック

ダイジェスト動画

放送第48回:美しき模様で愉しむサンドブラストガラスのピック

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