セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第6回 親子の絆を深める交換こけし

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約200年の歴史をもつ「こけし」は、よく見れば愛嬌があり、ポップな魅力にあふれる。
今や世界的にもブームとなっているこのこけしとのコラボレーションによって誕生したのは、
親から子へ、子から親へ、互いの想いを伝えるメッセンジャー――
「交換日記」ならぬ「交換こけし」である。

こけしの伝統

今、熱い注目を浴びるこけし
東京こけし友の会のようす
真剣な面持ちでこけしを選ぶ人々
東北6県で11の系統があるこけし
棟方志功が絶賛した「津軽系」
振ると首が動く「南部系」
イームズ夫妻も愛した「弥治郎(やじろう)系」
こけし界のモンロー「肘折(ひじおり)系」
しましま少女「土湯(つちゆ)系」

第三次こけしブーム!? その歴史と魅力

巷では今、こけしがブームだという。
販売会を開けば300本がわずか1時間ほどで完売するほどの
人気を誇る、伝統工芸のこけしをおしゃれにデザインした
「インディゴこけし」はその一例だ。

このように熱い注目を浴びるこけし。
そもそもこけしとは、いったい何なのか?
また、どのような歴史を辿ってきたのだろうか?

こけしは今からおよそ200年前、江戸後期、文化文政の頃、
雪深い東北の地で生まれた。

一説によると、山奥でお椀やお盆などをつくる「木地師」たちが
自分の子どもの「おもちゃ」としてつくったのがこけしのはじまり。
そんなこけしが世に広まったのは、
東北の人びとの暮らしに広がりはじめた「湯治」がきっかけだった。

田植や稲刈りで疲れた体を癒しに湯治場にやってきた農民たちを相手に、
「こけし」を売ったところ、子どもたちへの手土産にと
求める人が増え飛ぶように売れたのだ。
やがて各地の湯治場が競うようにつくりだし、
「こけし」は東北の子どもたちに欠かせない玩具となった。

だが、その後は波乱に満ちた“運命”が待っていた。
大正時代に入ると、キューピーなどの新興玩具に押され、
こけしは衰退の道をたどる。

しかし、昭和のはじめ1冊の本が新たな道を切り開くことに。
それが『こけし這子の話』。
日本で初めて、こけしを子どもの玩具ではなく
美術品として捉えた専門書である。
この本をきっかけに、全国各地に愛好家の集まりが生まれ、
第一次こけしブームが到来した。

時は流れ、戦後のレジャーブームで人びとが東北を訪れるように
なると、こけし人気はさらに過熱。
これが「第二次こけしブーム」である。

そして、今まさに起きているのが「第三次こけしブーム」。
60年の歴史を誇る「東京こけし友の会」ではここ数年、
若い女性の入会者が急増中だという。

コレクター心をくすぐる豊富なヴァリエーション

こけしは産地によって特色があり、
東北6県で実に11もの系統に分かれている。
東京こけし友の会・副会長の国府田恵一さんが
そのディープな世界を紹介する。

①まずは、青森県の「津軽系」。
あの棟方志功が絶賛したこけしである。
「津軽系の魅力は胸部のふくらみと、腰から裾にかけて広がる
ほかの系統にはないモダンな形。
そして、胴の部分のねぶた模様や、胸の部分に描かれた
アイヌ模様などの郷土色も魅力です」(国府田さん)。

②岩手は「南部系」。
特徴は、振ると首が動くこと。
ルーツは、地元に伝わる「キナキナ」というおしゃぶり人形。
首をかしげて見つめあう姿は、南部系ならでは。

③秋田は「木地山(きじやま)系」。
木地山系の特徴は着物姿。
おめかしした少女の大人びた雰囲気は、まさに「秋田おばこ(娘)」。

宮城には4系統がある。
④まずは、「鳴子(なるこ)系」。
その一番の魅力は、はにかんだようなひかえめな表情。

⑤「作並(さくなみ)系」の特徴は
モデルのようなスラッとしたスタイル。
胴が細いのは、子供が手に握って遊んでいた時代の名残り。

⑥「遠刈田(とうがった)系」の魅力は華やかさはそのシンボルだ。
頭部の手絡(てがら)と呼ばれる赤い放射状の文様だ。
切れ長の目は、色気さえ感じさせると国府田さん。

⑦「弥治郎(やじろう)系」は
椅子で名高いイームズ夫妻も愛したこけし。
特徴はロクロ線で描かれたベレー帽のようなカラフルな頭。
伝統工芸でありながら、ポップでモダンな印象が、
イームズの琴線に触れたのかもしれない。

山形には3系統。
⑧「肘折(ひじおり)系」の魅力も「顔」。
「こけし界のモンロー」と称されるセクシーな唇が魅力。

⑨「山形系」は作並系から発展した系統。
子供の玩具だったことを今に伝える貴重なこけしだ。

⑩「蔵王系」の特徴は丸みをおびた体。
ふくよかな顔は仏像を思わせる。

⑪11系統の最後は福島「土湯(つちゆ)系」。
別名「しましま少女」と呼ばれる胴のろくろ線が美しい。
「笑っているだけでなく、少し怒っているようにも、
何かを訴えかけるようにも見えます。
我々はそれを“シブさ”と表現するのですが、そんな表情が一番の魅力。
玄人筋うけするこけしですね」(国府田さん)。

以上、全11系統。
それぞれに個性があり、歴史がある。
そんな豊富なヴァリエーションと奥の深さが
コレクター心をくすぐるのだろう。

こけしの技術

こけし職人 菅原和平さん
仕上げ挽き
首入れ
描彩
菱菊(ひしぎく)を描く
完成品

200年の歴史を有する伝統の技

宮城県・鳴子(なるこ)温泉。
「こけしと言えば鳴子 鳴子と言えばこけし」と言われるように、
ここは日本屈指のこけしの町。 

いったい、こけしはどんな手仕事から生まれるのだろうか?
訪ねたのは、職人歴49年という菅原和平さん。
日本に14人しかいない“こけし”の伝統工芸士の一人だ。

こけしづくりは、まずは道具づくりから。
フイゴで火を起こしながら叩くのは
こけしづくりに欠かせない「かんな棒」。
もともと山奥で暮らす木地師は道具を自分でつくるのが習わしだ。
その伝統を今も受け継いでいる。

使用する木は、最低1年以上乾燥させる。
湿気が多いと、絵付けの際に染料がにじんでしまうから。

こけしの寸法に応じて切断するのが「木取り」。
使うのは木肌が白いミズキ。
鳴子こけしの色白の肌に合うことから使用されるようになったという。

続いて「荒挽き」。
木取りした材料をロクロに固定し、自作のカンナ棒を手に頭から削る。
カンナを当てると木はみるみるその姿を変えこけしの形に。
コツは、刃先の当て方を始終、微妙に変えながら削っていくこと。

荒挽きの次は「仕上げ挽き」。
「薄刃(うすば)」と呼ばれるカンナを使う。
もちろん、これも自作の道具。荒挽きで残った表面のケバを取り、
木地の仕上がりを美しくする。

代々受け継がれる鳴子伝統の技

今度は「磨き」。
古くから木地師たちが木地磨きに使用してきたトクサで丹念に磨く。
胴を磨き終えると「ろくろ線入れ」。
ろくろ線を入れ終えた肩の部分に穴をあけはじめる菅原さん。

そして次はいよいよ、鳴子秘伝の技「首入れ」だ。
実は、鳴子こけしの首のつなぎの部分は、
胴に空けた穴よりも大きくなっている。
ただ押し込むだけでは、入るはずがない首をいかにして入れるのか。

それを可能にするのが「首入れ」。
ろくろを回し、摩擦熱で木を柔らかく変形させ、
一気に胴にはめ込む秘伝の技だ。スローモーションで見ると、
たしかに、木が焦げて変色熱で木が柔らかくなる一瞬を
逃さずはめ込んでいるのがわかる。
この秘技によって、音が鳴る鳴子こけしができるのだ。

そして、こけしに命を吹き込む「描彩」、絵付け。
菅原さんがもっとも緊張するという瞬間でもある。

今でも顔に筆を入れるときは神経を使います。
筆のノリ、走りの良し悪しは日によってちがいます。
それは自分の精神状態の影響もあるのでしょう。
ですから、つねに無心でいるよう心がけています。
ー 菅原さん

胴に描くのは「菱菊(ひしぎく)」。
写実的な描写をするのが鳴子の伝統だ。
最後に、ロウ挽きでツヤを出し完成。
これが200年もの間、受け継がれてきた鳴子こけし伝統の技である。

こけし × 交換日記

青い帽子の頭
完成品
中に手紙が入れられる

親子の絆を深める「交換こけし」

かつて親と子の絆を深めていたこけし。
その本来の魅力を最大限にいかした、
まったく新しいアイテムができないだろうか……。
制作を依頼したのは鳴子こけしの第一人者である菅原さんだ。

「こういうのも面白い。つくるのは難しいでしょうけど、
チャレンジしたくなりますね」と、
オーダーを見た菅原さんはさっそく、
木取りした材料を抱えロクロ台に向かう。

カンナ棒を手にした菅原さんが削り出したのは、
いつものような丸い頭ではなく、
まるでつばが付いた帽子のようなもの。
しかも、それを真っ青に染めた。
胴の部分も同じく真っ青。
それらを伝統の「首入れ」で合体。
さらに、赤い樽のようなものや、直径わずか3ミリの黄色い部品まで、
大小さまざまなパーツができあがった。
いったい、どんな新しいこけしが生まれるのか。

完成したのは、郵便配達員の姿をしたこけし。
中に空洞があり、手紙が入れられる仕組みになっている。
親と子、祖父母と孫。手紙を綴り、
こけしに入れて交換し合う「交換日記」ならぬ「交換こけし」。
大切な誰かを想いながら手紙を書くという
豊かな時間を忘れてしまった現代人にぴったりの、
こけしのニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.006 交換こけし

ダイジェスト動画

放送第6回:親子の絆を深める
交換こけし

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