セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第7回 夜のひとときを穏やかに照らす竹工芸の明かり

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繊細にして堅牢、緻密な編みは決してたわむことなく、かつ軽い――。
日本らしさを体現する竹工芸は世界を魅了する。
今や芸術の域にまで高められた竹工芸とのコラボレーションによって生まれたニューアイテムは、
就寝前のひとときを穏やかな光で包み込む「竹工芸の明かり」だ。

竹工芸の伝統

海外で注目を集めている竹工芸
“バンブーアート”と呼ばれる緻密な手仕事
煎茶道の道具
世界で唯一の“竹のアート”

煎茶道の発展によって洗練を極めた竹工芸

イタリアのファッションブランド、
グッチのデザインアイコンのひとつとして知られるバンブーバッグ。
よく知られるように、そのシンボルである“竹”のハンドルは、
日本の竹がきっかけで生まれた作品だ。

バンブーバッグが誕生した1947年当時は、
ちょうど第2次世界大戦後のあらゆる物資が不足していた時代。
グッチの職人は、手に入りにくい牛革の代わりに
日本の竹を加工してハンドルにすることを思いついた。
こうして誕生した斬新でエレガントなハンドルのバッグは、
たちまち世界中のセレブを虜にしたのである。

今再び、竹を使った日本の工芸品が海外で注目を集めている。
その緻密で繊細な手仕事が光る作品は、
欧米では“バンブーアート”と呼ばれ、数百万円の値が付くことも。

日本が世界に誇る竹の“芸術品”。
その誕生の背景には、ちょっとした物語があった。

竹といえば、まず思い浮かべるのは
古くから農作業など生活の道具として使われてきたカゴやザルだろう。
それら竹製品と竹工芸は似て非なるもの。
竹工芸の誕生には、日本における煎茶ブームが深く関係していた。

中国発祥の煎茶の文化が日本に伝わり、
庶民の間に広まったのは江戸時代中期。
このとき、煎茶に欠かせない「唐物(からもの)」と呼ばれる
茶道具も同時に伝えられた。

見たこともない美しい竹製品に人びとは驚き、飛びついた。
すると、唐物を真似た竹籠づくりに乗り出す職人が現れ、
彼らの創意工夫により竹工芸は日本独自の歩みをみせることに。
やがて幕末に誕生した煎茶道は、
竹工芸を洗練された“芸術”へと導いていったのである。

160年以上の歴史をもつ由緒ある煎茶道の流派のひとつ、
大阪の一茶庵六代目宗家、佃 一輝さんは言う。

煎茶道の道具はすべて観賞するための
美術品としてつくられたものです。
竹工芸の高度な編みの技術は
煎茶道の発展とともにあると言っていいでしょう。
ー 佃 一輝

竹工芸は茶人の厳しい目によって
職人の技が磨かれ日本独自の発展を遂げたのだ。
こうして洗練を極めた日本の竹工芸は、
世界で唯一の“竹のアート”として、今なお人びとを魅了し続けている。

竹工芸の技術

四代目の田辺小竹さん
表面を削る
幅を揃える
“立ちあがり一寸を大切に”
緻密な細工
100年ものの煙草入れ
初代へのオマージュでもある小物入れ

0.01ミリの世界を見わける繊細な指

独特の色と艶、そして緻密で繊細な美しい編み目……。
日本らしさが凝縮されているといっていい竹工芸。
その伝統の技に触れるべく訪れたのは、
明治時代に竹工芸が盛んにつくられていた大阪・堺市。
120年の歴史を誇る田辺家の工房だ。
四代目の田辺小竹(しょうちく)さんは、
日本を代表する竹工芸作家である。

ほかの伝統工芸作家とのコラボレーションによる、
たとえば蒔絵(まきえ)が施されたものから、
部屋中を竹で覆ったインスタレーションによる現代アート作品まで、
その作風は創造性にあふれ実に多彩だ。
そんな田辺さんの作品は、海外での評価も高い。

素材となる竹を切り出しに竹林に出かけた田辺さんは言う。
「日本の竹工芸品のほとんど90%くらいは真竹という竹を使います。
真竹は繊維がとても細く、ひじょうに良質。
世界で最も高品質の竹だとされています」。

切り出した竹をそのまま使うことはない。
まずは油を抜き、乾燥させる。
この油抜きを終えた竹の表面を削ると、美しい艶のある部分が現れる。
素材となるのは、表皮に近い0.2ミリほどのわずかなところだけ。
削る厚みは、約0.05ミリ。
それ以上削りすぎると大切な素材がなくなってしまうのだ。

ミリ単位の素材の切り出しは、すべて手作業である。
頼りになるのは、指先の感覚のみだ。

0.0何ミリの世界になると、目ではなかなか判断できません。
重要なのは指先の感覚。日々こうして竹に触れているからこそ、
0.01〜0.02ミリの差でも感覚でわかるのです。
ー田辺小竹

素材となる竹ヒゴを切り出したら、二つの小刀の間に通して幅をそろえ、
丹念に面取りをして仕上げ。
この作業には、自ら加工した特殊な小刀を使う。

こうして仕上がった艶のある、
やわらかく弾力性のある竹ヒゴは、
田辺さんの手元で十分なしなりを見せる。

受け継がれる百種類以上の編みの技

ここからは、いよいよ竹工芸の真髄ともいえる編み。
まず、底の部分の竹を組み、熱したコテで竹を曲げながら形をつくる。
とくに最初のこの部分は、作品の出来を左右する重要なところだという。
「“立ちあがり一寸を大切に”とは、祖父の言葉。
底からの約3センチですべてが決まる、というわけです。
ここにわずかでもズレがあると、最終的にすべてが狂ってしまいます。
“立ちあがり一寸”に神経を注ぐのはうちの伝統のひとつですね」
と語る田辺さん。
この繊細な編みの技術をどのようにして習得したのだろうか。

最初は、技法なんて教えてもらえず、ただ籠を渡されて、
“これと同じ物をつくれ”と。
何がどうなっているのかまったくわかりませんから、
ほどいてみたり、寸法を測ったりと、模索しながらつくりました。
こうした経験のおかげで、さまざまなことがよく理解できて、
自分で生み出す力が培われたのだろうと思います。
ー 田辺小竹

田辺さんの曾祖父である、初代田辺竹雲斎(ちくうんさい)は、
名工として知られ、パリ万国博覧会で受賞するなど
国内外で活躍した作家だ。その作品をよく見ると、
何種類もの緻密な模様が編み込まれているのがわかるだろう。
初代から受け継がれてきた百種類以上の編みの技法は
その教えとともに今も田辺さんの作品に生きている。

繊細な編みの技を駆使した小物入れは、
そんな初代へのオマージュでもある。

今ここにある曾祖父の作品は約100年のもの。
当時の人びとが帯にさしていた煙草入れです。
こんな凝ったものを身につけて歩いていたなんて、
とても粋ですよね。
だから現代においても海外ブランドのバッグを持ち歩くように、
普段の生活で身につけたくなるような
工芸品ができないかと思ってつくったのがこの小物入れなんです
ー 田辺小竹

素材づくりから仕上げまで、
すべての工程において丁寧な仕事を施し、
最後に漆を塗ってようやく完成。明治から平成へ。
およそ100年の時を超え現代によみがえった小物入れだ。

竹工芸 × 明かり

田辺さんの原風景を形に
完成品
伝統的な花籠にも早変わり

竹工芸の明かりが生み出す光と影の“アート”

そんな小物入れのように、日常遣いしたくなる
竹の新たなアイテムを依頼された竹工芸作家の田辺さんは言う。
「田辺家に“伝統とは挑戦なり”という言葉があります。
しっかりと伝統を受け継ぎながら、つねに新しいものに挑戦すること。
こうしてはじめて伝統は継承されるのでしょう」。

ニューアイテムの構想を練りながら、
田辺さんはある風景を思い浮かべていた。
それは子ども時代の“原風景”とでもいうべきものだった。
「学校で嫌なことがあったり、
親に怒られて落ち込んだときにはよく縁側に座り竹を眺めていました。
思い出されるのは風に揺られた笹の葉が揺れる様子と、
葉と葉がこすれることで生じる音。
これが何とも言いがたく心地よいのです。
自分にとってそこは癒やしの場だったんですね。
僕が感じていた“竹による癒し”を、
何か新しい形にできないだろうか……」。

そんな想いを具現化した、
竹工芸のニューアイテムが「竹工芸の明かり」だ。

就寝前のひとときをやさしく包むほのかな明かり――。
この趣のある光のもと、好きな本をひもとくもよし、
お気に入りの音楽に耳を傾けるのもよし。
繊細な竹工芸が生み出す温かみのある光と影は、
一日の疲れを癒し、心穏やかな時間をもたらしてくれるだろう。

さらに、使い方を変えれば、伝統的な花籠にも。
光と影がおりなす芸術に癒される和の明かり。
これぞまさに竹工芸のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.007 竹工芸の明かり

ダイジェスト動画

放送第7回:夜のひとときを穏やかに照らす竹工芸の明かり

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