セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

第9回 家族の団らんを照らす鎚起銅器のランプシェード

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一枚の銅板を叩いて形をつくる鎚起銅器(ついきどうき)。
青山の骨董通りにオープンしたある店では、高額にもかかわらず、連日、飛ぶように売れていく。
海外でも人気が高い工芸品が、職人の手によってランプシェードというニュークラフトに生まれ変わった。

鎚起銅器の伝統

鎚起銅器
美しい黒色の紫金色
試行錯誤を経て、様々な色を出せるように

鎚起銅器「紫金色」の誕生秘話

今回のテーマである鎚起銅器とは、
一枚の銅板を「鎚」で叩き「起」こしてつくる「銅器」のこと。
使うほどに円熟味が増す深い味わいの器は、
国内外で人気が高まっている。

なかでも、多くの人びとを魅了してやまないのが、
鎚起銅器を代表する色彩といわれる、銅に鈴を焼き付けて生まれる
美しい黒色の紫金色(しきんしょく)である。
その味わい深い色合いが誕生した背景には、
職人たちの努力の物語があった。

新潟県燕市の西にそびえる弥彦山。
江戸時代中期、この山の麓で良質の銅が採れるようになり
燕の銅器づくりがはじまった。

その銅器づくりに革命をもたらしたのが、
渡り職人の藤七という人物だ。
藤七が伝えた一枚の銅を叩いてつくる
鎚起銅器の技術を受け継いだのが、玉川覚兵衛(たまがわかくべえ)。
覚兵衛は、鍋や薬缶などの鎚起銅器を燕の地場産業として定着させた。

その技術は代々伝えられ、明治以降、鎚起銅器は美術工芸品へと発展。
国内外の博覧会で高く評価されるようになる。

赤や茶色が主流だった鎚起銅器にその歴史を変える出来事が起きた。
時は明治、大正、場所は玉川覚兵衛から200年の伝統を受け継ぐ
玉川堂(ぎょくせんどう)でのこと。
銅の表面に錫を焼き付けたところ黒色に変化したのだ。
その後、試行錯誤を経て、美しい紫金色が誕生することになる。
さらに、その技術を応用して、緑や青、金色やいぶし銀などの色も
出せるようになっていった。

鎚起銅器の技術

鎚起銅器をつくり続けてきた椛澤伸治さん
打ち起こし
器の口をすぼめる
椛澤さん手づくりの鳥口
銅器に錫をひく
硫化カリウムの液のなかに銅器を入れる
完成

鎚起銅器のふるさとに受け継がれる技

鎚起銅器のふるさと新潟県燕市で
35年間にわたり鎚起銅器をつくり続けてきた椛澤伸治さん。
長男の雄太さんも、8年前からともに働いている。
椛澤さんが手がけるのは主に茶道の道具。
その伝統を受け継ぐ丁寧な手仕事には定評がある。

今回は、茶道の湯こぼしに使う建水(けんすい)で、
その技を見せていただいた。

続く工程は、銅板を器の形にする「打ち起こし」。
くぼみのある台の上に銅板をのせ、木槌で叩き、形をつくっていく。

銅は叩いているうちに硬くなるため、
何度も、焼き鈍して柔らかくする必要がある。
焼いた銅は、水で冷やしても硬くならず、
ある程度の柔らかさが持続する。

次は、器の口をすぼめる「打ち絞り」。
この作業で欠かせないのが鳥口(とりぐち)という金属の道具だ。
これを作業台に固定し、そこに銅板を被せ、金槌で叩く。
叩くと銅が伸びると思われがちだが、
伸ばすのではなく器の口を叩いて絞るようにつくっていくのである。

ここで重要なのは、銅器の縁にできるシワのたたき方。
このシワが重ならないように打つ。これぞ熟練の技。

金槌で叩きつづけると、だんだんシワができてきます。
そのシワの頭を叩いていくわけですが、
そこで早く絞りたいという気持ちがはやると、
シワが重なって切れてしまったりすることもあるので、
やはり丁寧に叩いていきます。
ー 椛澤伸治

匠の技を実現する道具

打ち絞りに欠かせない鳥口もすべて椛澤さんの手づくりだ。
器の形によって使いわけるためさまざまな種類がある。

「銅板を平らに絞るときに使ったのは平らな鳥口。
これを中に入れるために、
今度はアールがついた鳥口ではたいていきます」。

形が整ってきたところで、また鳥口を交換。
今度は内側から叩いて器の縁を広げていく。

次はいよいよ着色。
銅器に錫をひき、火で焼いて、表面を錫と銅の合金にする。
これによって鎚起銅器ならではの美しい色が生まれるのである。

この時欠かせないのが、家に伝わる秘伝のタレ、
すなわち味噌だという。

銅と錫の合金をつくるために焼くわけですが、
このときに味噌でコーティングをすると
均一に良い色がでるんですよね。
少しずつ、つけ足しながら10年以上使っている
自家製の味噌です。
ー 椛澤伸治

仕上げは、表面を綺麗に磨いた金槌で、
美しい鎚目模様を入れるための叩き。

今度は、ヤスリで銅を削り模様を入れていく。
そして再び着色。
温泉の成分に似た硫化カリウムの液のなかに銅器を入れると、
化学反応を起こし、瞬く間に真っ黒に。

この黒くなった器を「紫金色」に美しく仕上げるため、丹念に磨く。
鎚目模様の山になった部分の色を落とし、
模様を浮き立たせていくのである。

仕上げに、銅の錆の成分である緑青(ろくしょう)と、
硫酸銅(りゅうさんどう)の溶液で煮て着色。
すると真っ黒だった銅が緑色を帯びた美しい紫金色に変わっていく。
紫金色は、溶液で煮る時間が短いと青く、
長くなると緑色に変化するという。

最後に漆を塗り1時間ほど焼いて、ようやく完成。

鎚起銅器 × ランプシェード

新しいアイテムづくりにとりかかる。
完成品
内側には綺麗な鎚目模様

現代のライフスタイルに寄り添う伝統

最後に、アーツ&クラフツ商會のオーダーを受けた椛澤さんが
新しいアイテムづくりにとりかかる。

家業の傍ら、椛澤さんがオブジェなどの創作活動はじめたのは25年前。
今年の工芸展では、受賞の栄誉に輝くほどに。
「これまで手がけてきたオブジェのテーマが
新しいアイテムづくりにも生かせる」と椛澤さん。

テーマにしているのは、球根やつぼみなんです。
表は控えめな色や形にする一方で、
裏はすごく派手なデザインにしたり。
鎚目を綺麗に出すために、叩き方も普段とは少し変えました
ー 椛澤伸治

一体、どんなアイテムが生まれるのだろうか。

アーツ&クラフツ商會がオーダーしてから2週間。
最後に漆を塗り焼いて完成したのは、リビングを彩るランプシェード。
表面は、あえて使い込んだ色になるよう着色。
控えめな鎚目模様には、銅の温かい質感が漂う。
一方、内側には綺麗な鎚目模様……。
食卓から見上げたとき、表情の変化を楽しめるよう工夫を凝らした。

家族の団らんをやさしく照らすランプシェード。
一振り一振りに心を込めた、
手仕事の温もりを感じさせる逸品。
これぞまさに鎚起銅器のニュークラフツである。

アーツ&クラフツ商会 Lot.009 鎚起銅器のランプシェード

ダイジェスト動画

放送第9回:鎚起銅器のランプシェード

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