セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

スペシャルトークショー 渡辺いっけい

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「アーツ&クラフツ商會出張展in二子玉川 蔦屋家電」。
2日目の8月9日のスペシャルトークショーのゲストは、
東京の片隅にある架空のお店「アーツ&クラフツ商會」4代目店主・森須 護(もりす・まもる)に扮し、
番組をナビゲートする俳優の渡辺いっけいさん。
番組でも紹介してきた伝統工芸を振り返りながら、「ずっと続く価値」をテーマにお話を伺いました。
番組をナビゲートする俳優の渡辺いっけい
「伝統工芸って、知れば知るほど奥が深いですよね」

日々の“ワクワク”が変わらぬ価値を生む

■「アーツ&クラフツ商會」の
ナビゲーターを務められてみていかがですか?

渡辺いっけい(以下、いっけい):
伝統工芸の職人さんとは“ものづくり”という点で、
シンクロする部分もあります。僕も“職人気質の役者”と呼ばれるような
役者になりたいと思っていますから、なおさら職人のみなさんのことを
尊敬しているんです。番組に携わることができて本当に嬉しく思っています。
職人さんというのは、一流であればあるほど、
「一人では何もできない」ことを自覚しておられます。
そうした謙虚な気持ちをもって、過去ではなく、未来を見据えて、
ひたすら精進を続けていらっしゃる。
みなさん本当に自分に厳しくて、謙虚なんですよね。

■これまでたくさんの伝統工芸を紹介されてきました。
そのなかで一番印象に残ってらっしゃるものは?

いっけい:
「鳴子こけし」ですね。
首を胴体に入れる作業はとてもインパクトのあるものです。
これは絶対に自分にはできないだろうなという、
熟練の技がとくに印象に残っています。

■「鳴子こけし」以外に、印象深かった伝統工芸はありますか?

いっけい:
釘をいっさい使わずにつくる江戸指物もそのひとつです。
“隠れたところに手間ひまをかけるのが粋”だなんて、
いかにも日本人らしいですよね。役者の仕事においても、
簡単そうに見えることでも手を抜いちゃいけないな、
ということをこの番組をきっかけに改めて考えるようになりました。
伝統工芸って、知れば知るほど本当に奥が深いですよね。

(右)「鳴子こけし」職人の菅原和平さん
「鳴子こけし」

■さて、ここからは、先ほどお話に出ました「鳴子こけし」職人の
菅原和平さんにもご参加いただきます。

いっけい:
番組としては共演しているんですけど、お会いするのは初めてですので、
本当に感動しています。

菅原:
私も大変嬉しいです。

いっけい:
鳴子こけしの首の部分がきゅっ、きゅっとなる仕組みは
いつごろできたものなんですか?

菅原:
明治時代のなかごろですね。
そのときに今よく知られる鳴子こけしの形になりました。

いっけい:
あれは本当にすごい技術ですよね。

菅原:
そうなんです。あれがとくに難しくて、職人歴48年目ではありますが、
今でも失敗することがあるんですよ。
胴体をろくろでまわしながら、摩擦の熱を利用してはめこむわけです。
その瞬間は、木が焦げて煙がでるほどの摩擦熱が発生します。
接合部分がゆるすぎたり、逆にきつすぎてまわらなかったりしても、
いい音が鳴らないんです。

■ここで菅原さんに、番組で紹介した交換こけしの
絵付けをしていただきます。

いっけい:
先ほどお聞きしたんですが、実際に絵付けをしているときは、
呼吸を止めるんですって。それくらい集中力を要する作業だとか。
何の下絵も描かずに、いきなり書かれるんですね。

菅原:
こんなかんじで描いていきます。

いっけい:
いい顔してるなあ。素晴らしい!
どんなことを意識されて書かれているんですか?

菅原:
素朴さを残しながら、可愛らしくなるように、と。

いっけい:
そのシンプルで素朴な表情のなかに、
子どものかわいらしさや親の子どもへの愛情など、
さまざまな想いが込められているようで、感動的ですね。
これまでの作品のなかで、これが一番だな、と思うものはありますか?

菅原:
それがなかなか無いんですよ。
完成したときは、ああ、これはいいなあ、と思っても、後で見ると、
なぜこれがいいと思ったのだろう?と
首を傾げたくなるものもありますし。

いっけい:
現在、第3次こけしブームと言われているようですが、
ブームを実感することはありますか? “こけ女”なる言葉もあるようですが。

菅原:
こけしに興味をもつ若い女性が増えていることは実感しています。
過去を振り返ると、だいたい30年周期で
こけしブームがきているんですが、そうしたブームとは関係なく
いつの時代もマニアの方がいらして、
なかには数千本をコレクションされている
熱狂的な方もいらっしゃいますよ。

いっけい:
それはすごい! こけしにはいつの時代も変わらない魅力がある、
ということでしょうね。

■最後に、いっけいさんに伺います。
こうした伝統工芸が、いつの時代も変わらない魅力をもっているのは
なぜだと思われますか?

いっけい:
伝統工芸というと、“守らなければいけないもの”と考えがちですけど、
一流の職人さんたちは、“今の時代に向けて何ができるか”を常に
考えてらっしゃるような気がするんですね。
たとえば、番組でも紹介した藍染めのインディゴこけしが
ブームになったのも、それまでの伝統を打ち破り、
こけしに藍染めを施してみたら、それが今の人にひじょうにウケた、
ということでしょう。
伝統工芸というものは、そうした革新が繰り返されてきたからこそ、
今日まで受け継がれてきたものなんでしょう。
絶えず呼吸するように、新しいものを取り入れるということが、
大切なんですね。それは僕が役者として心がけていることでもあります。

■それがずっと続いていく価値になっていくのでしょうね。

生きていく上で目線がブレないことが大事だと思います。
どんなにしんどい時期であっても、前を向いていくことが大事で、
それが継承していくことにつながっていくのではないでしょうか。
僕自身もよくくじけるんですが(笑)、
職人さんから勇気をもらうことがあります。

――ものづくりに生涯を捧げる職人の姿勢に
深い共感を寄せる渡辺いっけいさん。
番組をナビゲートする饒舌な店主・森須護とは異なり、
自問するかのように朴訥に語りかける姿は、俳優というよりも、
まるで熟練の職人のようでもありました。

写真:吉野久

PROFILE: 渡辺いっけい(わたなべ・いっけい)

1962年愛知県生まれ。大阪芸大在学中に劇団☆新感線で活動、
その後、劇団状況劇場に参加。
退団後は数多くのテレビドラマや映画、舞台で存在感を示している。
近年の主な出演作品は、テレビドラマ「明日の光をつかめ」
「ドクターX」、舞台「鉈切り丸」「ハルナガニ」「おもろい女」など。
現在、「アーツ&クラフツ商会」(BS朝日)の
ナビゲーターとして出演中。
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