セキスイハイムpresents

アーツ&クラフツ商会

【放送】
毎月 第一および第三月曜日
夜11:00~11:30
ナビゲータ/坂井真紀

変えることで変わらない心地よさ -小山薫堂

TOP > インタビュー/レポート > スペシャルインタビュー 小山薫堂
テレビや雑誌、ラジオのほか、
レストランやホテル、イベントや商品のプロデュース、またファッションからライフスタイルまで、
本人も把握しきれないほど活躍の分野が多岐にわたる小山薫堂氏。
いずれの場合も、その仕事ぶりから滲み出るのは、
本当の上質を知る者だけがもつ、さりげない“こだわり”である。
そんな小山氏が考える“価値が続くもの”とは。

“変える”ことで“変わらない”心地よさ

当然、モノは新品のときがキズもなく一番きれいです。
しかし、中には使うほどに古びていくのに、
なぜか愛着がわいてくるものがあります。
たとえば、僕が長らく愛用している
グローブ・トロッターやリモワの旅行鞄。
時を経るごとに風合いが増し、少しずつ肌に馴染んでくる。
それは、名品と呼ばれるモノに共通する感覚かもしれません。

世代を超えて受け継がれることを前提に作られた上質の品は、
持ち主たちのさまざまな物語が込められることで、
一層かけがえのないものになります。僕の場合なら、
今も愛用するパテック フィリップの時計。
世代を超えて受け継がれるこの1本には、特別な思い入れがあります。

入手したのは、37歳で、会社を立ち上げ、
仕事に対する自信がついてきたころ。
自分へのご褒美として、プラチナ素材のものがほしくなりました。
あの独特の風合いがとても魅力的で。
そこで思い切って購入したのが、
パテック フィリップのプラチナ仕様のワールドタイムでした。
それから十数年、メンテナンスをしながら大事に使い続けるうちに
腕に馴染み、さらに微妙な風合いの変化によって
世界でただ一本の時計になっていく……。

住まいもまた、時の流れとともに、
そこには家族の記憶が刻まれていきます。
フローリングや柱の艶、あるいはドアノブのくすみも愛おしくなり、
ますます大事に住み続けようと思うものです。
しかしその一方で、長く暮らすうちに、ライフスタイルや
価値観の変化によって、変えたくなる部分も出てくるはずです。

たとえば、リビングの広さ。
これは僕が住まいの中で最も重きを置くポイントでもあります。
僕が今、ベストだと思うのは18畳から20畳くらい。
それは、6~8人の親しい友人、あるいは家族が集ったときに、
お互いの距離感が程よく、リラックスした
親密な空気をつくることができる、ちょうどよい広さなんです。

ちなみに、以前、番組のナレーションを書いている時に参考にした、
ミース・ファン・デル・ローエなどの建築や、
吉村順三さんの名建築の一つとされる「軽井沢の山荘」のリビングも、
ほぼそれくらいの広さだったはずで、
それがとても心地よさそうだったのを覚えています。
18畳~20畳という僕が理想とするリビング空間の広さは、
さまざまな経験を経ることで辿りついた一つの答えだとも言えるでしょう。

それはもちろん、年を重ねることで変化する可能性もあります。
たとえば20代の前半なら、たとえ狭くてもワンルームの
自分の空間があるだけで満足でしたし、30代には広ければ広いほど
快適だと考えていたこともありました。60代から70代を迎える頃には、
反対にこの広さを持て余してしまうかもしれません。

そんなことを考えると、価値が続く住まいとは、持ち主の
ライフスタイルや価値観の変化にその時々で対応できる住まいのこと。
それは、間取りの変更や外壁、あるいはフローリングの張り替えなど
リフォームが容易であるだけでなく、そうした変化に対応できる
システムと耐久性を備える住まいでなくてはなりません。

“変える”ことで、いつも“変わらない”理想の空間で暮らせること。
それは価値の続く住まいの大切な条件の一つだと思っています。

PROFILE : 小山薫堂(こやま・くんどう)

1964年 熊本県天草市生まれ。放送作家、脚本家。
大学在学中に「11PM」で放送作家デビュー。
その後、伝説の深夜番組「カノッサの屈辱」
「進め!電波少年」「料理の鉄人」など、
数多くのヒット番組の企画・構成に携わる。
2009年、脚本を手掛けた映画「おくりびと」で
米国アカデミー賞の外国語映画賞を受賞。
エッセイ等の著作多数。
執筆活動のほか、企画プロデュースや
アドバイザーの仕事も数多く行っている。
「くまモン」の生みの親でもある。
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